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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第七の試練

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「断」―《決断を刻む王路》

◆「断」ルート

―― 決断を刻む王路



 大樹の中心に芽吹いた灰の紋は、静かに揺れていた。

 光と影の循環は保たれている。それでも、世界は常に均衡を拒む。力は偏り、欲望は溢れ、時間は状況を変え続ける。調停は永遠ではない。必ず、両立できぬ瞬間が訪れる。



 最初の歪みは、小さな争いとして現れた。



 光の領域に属する都市が、影の節に繋がる村への供給路を閉ざしたのだ。表向きの理由は「安全保障」。だが実際には、影の民が持つ特異な術式を恐れ、排除しようとする動きだった。



 大樹の律動が乱れる。

 光は正しさを盾にし、影は沈黙の中で怨嗟を溜め込む。



 調停の王であれば、双方を説き、時間をかけ、歩み寄りを促しただろう。

 だが、エルドは違った。



 彼は都市の門に立ち、光の評議会に告げた。



「供給路を開け。

 拒むなら、その“正しさ”を王家が断つ」



 評議会は反発した。

 光は秩序であり、影は不安定だと。

 排除は合理であり、防衛だと。



 エルドは一度だけ、大樹の紋を顕した。



 灰の紋は光を否定せず、影を庇いもしない。

 ただ、“均衡を壊す意志”そのものを切り分ける。



 その瞬間、都市を守っていた光の結界が、王の意志に応じて一部のみ解かれた。

 門は開いた。

 だが同時に、評議会の権限は王家によって剥奪された。



 救われたのは影の村。

 失われたのは、光の都市が持っていた“自治という誇り”だった。



 王は勝者ではない。

 ただ、選んだだけだ。



 この裁定は、世界に波紋を広げた。



 影の民は、初めて王家を信じた。

 光の貴族たちは、初めて王を恐れた。



 以降、エルドの名には二つの呼び名が並ぶ。



 「調停者」

 そして――

 「切断の王」。



 彼は、常に両方を抱えた。



 戦争を避けるために、誰かの未来を断つ。

 世界を守るために、ある正しさを終わらせる。



 そのたびに、大樹の灰の紋は微かに濃くなる。

 均衡は保たれる。

 だが、完全ではない。



 夜ごと、エルドは独りで中心に立つ。

 光と影が巡る音を聞きながら、問い続ける。



――あの選択は、調停だったのか。

――それとも、ただの断絶だったのか。



 答えは返らない。

 大樹は沈黙を保ち、世界は前に進み続ける。



 それでも、彼は歩みを止めない。



 調停者であるがゆえに、

 誰よりも多くを失いながら、

 それでも“選び続ける”王として。




◆「裁」ルート ―― 王に抗う秩序


 王の裁定が正しければ正しいほど、人々はそれを恐れ始める。光の貴族たちは密かに同盟を結び、「王に抗うことこそ秩序」と掲げて蜂起する。エルドは、暴君ではないにもかかわらず、暴君として語られる存在となる。正しさが拒まれる世界で、王は「力を振るわぬために、再び断つ」選択を迫られる。


---


◆「芽」ルート ―― 次代への影


 エルドの裁定を見て育った若き王候補が現れる。その者は「断つ王」の姿だけを学び、調停の苦悩を知らない。迷いなく切り捨てるその姿に、民はかつてのエルドを重ねる。王は悟る――自分の在り方が、歪んだ形で未来に刻まれていると。彼は初めて、「自分の死後」を守る決断を迫られる。


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