「衡」―《均衡を守り続ける王路》
「衡」ルート
――均衡を守り続ける王路
大樹は、何も語らなかった。
光も影も、勝者を求めなかった。
エルドは、剣も紋章も掲げない。ただ、その中心に立ち、流れを“聴く”ことを選んだ。
争いの兆しが生まれれば、片方を裁くのではなく、二つの理由を並べる。
正義と正義、恐れと恐れ――それらが同時に存在できる場所を、言葉ではなく“構造”として示した。
都市は急には変わらない。
影の民はすぐに救われない。
光の貴族も、誇りを失わない。
だが、世界は壊れなかった。
大樹の枝はゆっくりと伸び、衝突の芽を事前に受け止め、過剰な力を分散させる。
誰かが英雄になることはない。
代わりに、誰かが滅びる物語も生まれない。
人々はやがて気づく。
王が「決断しない」のではない。
王が“世界に決断を強いない”のだと。
エルドは歴史に名を刻まない。
だが、争いが起こらなかった年が積み重なり、
その静けさこそが、王の存在証明となる。
光と影は、互いを疑いながらも、共に息をする。
世界は劇的には変わらない。
それでも、今日も終わらない。
最も長く続く道――
それが、この王の選んだ“衡”だった。
《アナザーエンド》




