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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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「翼」―《不死鳥の隻翼》

◆「翼」ルート《不死鳥の隻翼》

――炎と翼と知識の交差点



 背に宿る隻翼が、静かに空気を裂いていた。

 それは完全な飛翔を許す翼ではない。地に立つ感覚を失わぬまま、必要な瞬間だけ高度を変えるための補助輪。その特性を理解した上で、エルドは慎重に上昇と下降を繰り返していた。



 不死鳥の籠を抜けてから、世界の遠近はわずかに歪んでいる。高所から見下ろす景色は、以前よりも構造的で、層を持っていた。空は単なる空間ではなく、選択肢の集合体のように思えた。



 その飛翔を、誰かが見届けていた。



 瞬間、頬をかすめる衝撃。

 空気が裂け、遅れて羽音のような音が届く。



 矢だった。

 だが、金属ではない。鳥の羽を束ねて成形された矢が、通過した軌跡そのものを燃やし、炎の線を空中に刻んでいた。



 振り返った先で、炎の線が円を描くように収束する。

 そこに立っていたのは、半人半獣の男だった。



 右肩にはトランプのクローバーを模した紋。

 右背からのみ伸びる隻翼。

 構えられた弓は、弦を引くたびに熱を帯び、矢をつがえる前から周囲の空気を焦がしている。



 エルダニクス。

 炎帝に仕え、同時にその思想から距離を置いた存在。

 隻翼の天使であり、イーグルの魔人。完全な獣にも、人にもなれなかった男。



 導きの欠片が、胸の奥で反応していた。

 ただの襲撃ではない。この邂逅は、翼を得た者が必ず通る検問のようなものだった。



 高度を落とし、地へ降りる。

 飛翔をやめる選択は、敗北ではない。戻る地点を定める行為だ。



 声をかけるより早く、二射目が放たれる。

 炎の矢が直線を描き、進路を塞ぐ。



 水の魔法は扱えない。

 相性以前に、理解が追いついていない。



 代わりに展開されるのは、《蒼の加護:識導の紋》。

 知識の図書館が開かれ、空間に無数の概念が重なり合う。



 炎とは何か。

 矢とは何か。

 飛翔とは、落下とは。



 知識と炎が拮抗し、互いに譲らないまま、衝突点を探して揺れる。

 エルダニクスは射続ける。言葉はない。その沈黙自体が問いだった。



 隻翼で飛ぶとはどういうことか。

 完全でない存在が、空へ手を伸ばすとは何を意味するのか。



 一瞬、彼の輪郭が揺らぐ。

 獣へ変じかけた影が、片翼のまま空を切り裂く。完全なイーグルにはならない。なれない。その制限こそが、彼の立ち位置だった。



 空に留まらず、地にも縛られない。

 常に下降を前提とした飛翔。



 その姿は、エルド自身の隻翼と重なる。



 三射目の矢が放たれたとき、軌道がわずかに変わる。

 それは命中を狙ったものではなかった。進路を示す矢だった。



 そこに降りられるか。

 選べるか。



 答えは、まだ示されない。

 だが、この遭遇が偶然ではないことだけは、確かだった。



 炎と翼と知識が交差する地点で、物語は次の高度へ進もうとしている。

 空は、まだ広い。








◆《追撃》ルート ― 空を争う者


 炎の矢を合図に、二人は空へ踏み出す。隻翼同士の飛翔は速度では決まらず、どこへ降りるかで優劣が分かれる。エルダニクスは本気の高度を見せ、獣の影が空を裂く。勝敗はまだつかないが、この追撃戦を越えた先で、師弟とも敵とも言えぬ関係が芽生え始める。



---



◆《翼成》ルート ― 地を選ぶ者


 空を捨て、地へ降りた選択に、エルダニクスは矢を止める。戦場は静まり、距離だけが残る。隻翼とは飛ぶための力ではなく、立つ位置を示す印だと語られる。炎帝の教えと背反の理由が明かされ、この理解が後に、翼の使い方そのものを変える伏線となる。



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◆《折翼》ルート ― 矢の意味を読む者


 識導の紋によって、炎の矢が攻撃ではなく道を刻んでいると見抜く。空に描かれた線は迷宮の分岐を示し、エルダニクスは導く側へ退く。戦わずして進むこの選択は、迷宮構造の理解を深めるが、次に現れる試練は、より抽象的で逃げ場のないものとなる。



---



◆《拒翼》ルート ― 飛ばない選択


 翼を使わず進む姿に、エルダニクスの攻撃は激しさを増す。矢は避けられず、地形と判断だけが頼りとなる。隻翼は使うためではなく、使わない覚悟を測るものだったと示される。この先、翼は形を変える可能性を秘めるが、その代償はまだ明かされない。



---



◆《比翼》ルート ― 隻翼を重ねる者


 二つの隻翼が一瞬だけ重なり、完全な翼の影が生まれる。飛翔ではなく、共有された落下が起こり、世界は下層へと遷移する。エルダニクスの役目はここで終わり、炎帝と不死鳥の思想が直結する領域へ踏み込む。戻れるかどうかは、まだ分からない。



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