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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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「王」―《厳正で勇敢な道》

◆「王」ルート ― 厳正で勇敢な道



 真の間は、張り詰めた空気で満ちていた。

 玉ルートで感じられた柔らかな余白はここにはない。慰めも、猶予も、最初から存在しない。石座を中心に広がる空間は、判断だけを許すために整えられていた。



 床に浮かぶ光は三つ。どれも等しく輝き、等しく重い。それぞれが異なる未来を示していることは、説明されずとも理解できた。砦は教えない。ただ選ばせる。選ばなかった結果を、沈黙のまま引き受けさせる。



 光に近づくほど、胸の奥が冷えていく。

 救われる命。切り捨てられる土地。守られる秩序。失われる信頼。

 どれかを手に取れば、残りは確実に崩れる。玉ルートのように拾い集め、結び直す時間は与えられない。ここでは、世界は待たない。



 そのとき、空間がわずかに歪んだ。

 玉座の背後、かつて王が立っていた場所に、光の輪郭が立ち上がる。



 古代の王、エルタニエル。

 それは実体ではなかった。夢界に残された記録が、稲妻回路のように束ねられ、姿を取っているにすぎない。だが、その存在感は圧倒的だった。英雄としてではない。選び続けた結果として、そこに立っている。



 エルタニエルは王冠も剣も持たない。

 ただ、すべてを背負った沈黙だけを纏っている。



 その口が、初めて開いた。



『沈黙せよ』



 声は命令ではなく、宣告だった。

 感情も、弁明も、希望的観測も、すべてを切り落とすための言葉。



 光が揺れる。三つの未来が、互いを押し退けるように脈動する。砦全体が低く鳴り、記録台が反応を始めた。そこに刻まれるのは、善悪ではない。結果だけだ。



 一歩踏み出した瞬間、二つの光が消えた。

 消滅は静かで、抗議はない。救われなかったものは、声を上げることすら許されない。



 空間に残った光が、選ばれた未来として定着する。

 同時に、胸の奥に重みが沈む。達成感ではない。納得でもない。ただ、続いていく世界の感触だけが、確かに存在していた。



 エルタニエルの輪郭が薄れていく。

 その姿は賞賛も後悔も残さず、記録へと還っていった。王とは、語り継がれる存在ではない。選択が積み重なった結果として、世界の裏側に沈むものだ。



 玉ルートが、声を拾い、歪みを癒し、時間をかけて世界を長く保つ道だとすれば、この道は違う。

 ここでは、世界を即座に立たせ直すことが求められる。優しさは遅れとなり、ためらいは崩壊に直結する。



 記録台に文字が刻まれる。

 勝利でも、栄光でもない。

 ただ一行、この判断によって秩序が継続した、という事実だけ。



 砦は完全な城へと変わる。

 寄り添う場所ではない。背負う場所だ。

 人々が気づかぬまま日常を続けられるように、すべての重さを内部に封じ込める構造。



 誰も称えない。

 誰も感謝しない。

 それでも、世界は崩れなかった。



 それこそが、この道を選んだ証だった。



---



●「激」ルート ― 迷いを切り捨てる王


 真の間に浮かぶ三つの光は、互いに干渉しながら激しく明滅していた。砦は異常な静止状態に入り、風も記録も止まる。時間だけが引き延ばされ、選択という行為そのものが試練へと変質していく。

 思考を重ねるほど、空間の歪みは増し、選ばれなかった可能性が崩落音を立て始める。砦は待ち続けるが、世界は待たない。

 その瞬間、石座がわずかに角度を変える。熟慮ではなく即断を求める配置。迷いを断ち切れと、構造そのものが迫ってくる。

 ためらいが長引けば、すべてが失われる気配だけが、確実に近づいていた。



---



●「凪」ルート ― 名を残さない王


 選択の光が提示された直後、砦の記録台が異常な反応を示す。文字を刻むはずの面が白く戻り、過去の紋章が次々と消えていく。砦は判断を拒んでいるのではない。主体の不在を要求していた。

 空間には、王という概念そのものを希薄化させる圧が満ちる。名前、立場、役割が一つずつ剥離し、判断だけが前面に押し出されていく。

 ここで刻まれるのは、誰が選んだかではない。選択だけだ。

 砦は静かに構造を組み替え始める。存在を残さないための、完全な統治装置として。



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