「吽」―《終りを確定させる道》
◆CDルート《吽 ― 終焉の異層 (アナザールート)》
「吽」の石に指が触れた瞬間、秤はぴたりと静止した。揺れは消え、空気が硬質に変わる。光は減り、影が輪郭を持ちはじめた。すべてが確定する――はずだった。
しかし、空間は微かに歪む。秤は均衡を保っているのに、床の文様が淡く脈打つ。過去は結果として扱われ、未来は揺るがぬ形を得たが、その形はどこか歪で、通常の秩序とは異なる。
玉座の間の扉が、無音で開く。奥から黄色い眼光のローブの魔法使いが現れ、視線を残してすっと消えた。秤は沈黙し、秩序の確認は終わったはずなのに、異層の兆しだけが残った。
ここは正規ルートの「終わり」ではない。
揺るがぬ力を得た者だけが踏み入れられる、迷宮の影の領域。既成の秩序に属さぬ選択が積層され、歩む者の存在そのものが秤を再定義する。
赤い光が空間の奥で瞬き、終焉の確定を示すかのように揺れる。だがそれは祝福でも承認でもない。秤が測るのは、あくまで選択の“質”――アナザールートは、迷宮が秘匿するもうひとつの秤の姿だった。
ここを越える者は、迷宮の正規の秩序を超え、別の可能性と対峙する。終わりを確定させるはずの道は、むしろ新たな胎動を孕んでいた。
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◆分岐《違》ルート ― 『アナザーディメンション』
赤い光の奥、秤の均衡が微かに揺れる中、声は低く魔法の呪文を唱える。
「アナザーディメンション」――言霊が空間を裂き、異なる層へ扉を開く。霧は光の粒となって宙に浮かび、胎動は振幅を増す。過去と未来の層が交錯し、既存の秩序から逸脱した世界が現れる。進む者は、迷宮の秘奥に隠された新たな秤を前に、未知の可能性を試される。
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◆分岐《亜》ルート ― 『アスタラスタ』
魔法使いが残した赤眼の余韻に目を凝らし、呪文を唱える。
「アスタラスタ」――声が空間の深層に染み込み、静かに層を呼び覚ます。灰色の影が形を変え、胎動はより深く胸を打つ。秤は静止したままだが、時間の層がひとつ、歪む。未知の力が通路を照らし、歩む者の意思が新たな秤を刻む。迷宮は、この選択を待っていたかのように応える。




