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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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「阿」―《はじまりを引き受ける道》

◆CDルート《 ― 胎動の通路》



「阿」の石に指先が触れた瞬間、秤はわずかに傾いた。


 轟音が空間を震わせ、床が微かに振動する。光は白に近く、柔らかく揺れるが、その音の衝撃は足元から胸にまで届いた。霧が立ち上がると同時に、床の光の中から石像が姿を現す。



 その石像は――エルド自身と瓜二つだった。細部まで似せられた顔、身に纏う装束のしわ、手に握る剣の形までも、まるで鏡の中の自分が現れたかのようだ。目は閉じているのに、存在感だけは圧倒的だった。



 灰色だった空間は一瞬にして歪み、玉座の間の扉がバンと開いた。木の響きと共に空気が振動し、奥から黄色い眼光を持つローブの魔法使いがこちらを見下ろしていた。視線は鋭く、空間の揺らぎすら制御しているかのようだった。



 胎動の感覚は強まり、重さは増すが、足取りは軽い。秤は静かに揺れ続け、通路は白銀の霧に包まれたまま伸びていく。過去の影は素材となり、未来はまだ輪郭すら定まらない。歩くたびに、選択は結晶化せず、しかし確かに身体を押す。



 ここで求められるのは、強さでも、覚悟でもない。

 未完成を抱えたまま、前に進む意思――ただそれだけだった。



 霧の奥、光の通路を進むたび、秤の残響と石像の存在感が、これまで積み上げてきた決断の重さを静かに知らせる。後悔はない。ただ、選んだ道が揺らぎ、柔軟に変化できることを示す波紋がそこにある。



 歩を進めるごとに、迷宮は応答するように脈打つ。胎動は鼓動となり、通路の層は柔らかく重なり、未来の可能性を開いたまま積み重なっていく。秤は沈黙し、光は揺れる。道は決まったわけではない。けれども、歩む者の意思が、この先の形を自然に決めていく。



 灰色だった世界に、わずかな光が宿る。

 選択は固定されず、未来は開かれたまま。だが、すべての歩みは積み重なり、やがて揺るがぬ地盤となる。



 胎動の通路は、始まり続ける者だけが進める道――それが、《阿》ルートだった。



 背後で、石像は静かに立ち続け、黄色い眼光の魔法使いは通路の先を見据えている。胎動の力が静かに共鳴する中、迷宮は、新たな可能性を秘めた者の歩みを待っていた。



---



◆分岐《現》ルート ― 魔法使いを追う道


 轟音と共に現れた魔法使いの眼光に導かれ、通路を駆ける。だが扉は背後で音を立てて閉じ、引き返せない。空間は白銀の霧に揺れ、秤の残響が耳に残る。未来は未定、選択は重く、だが進む意志だけが道を切り開く。迷宮の胎動が身体に伝わり、追う者と追われる者の静かな駆け引きが始まる。



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◆分岐《玄》ルート ― 石像と赤眼の謎


 そっくりな石像を調べると、魔法使いは忽然と消えた。安堵も束の間、再び目を向けると、奥に赤い眼光が差す。秤の静寂は残るまま、胎動は鼓動に変わる。過去の選択が素材となり、未来の輪郭はまだ揺らぐ。終わりではなく、新たな謎と対峙する道――迷宮は、再び歩む者を試す。



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