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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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「和」―《鎧武者》

◆「和」ルート《鎧武者》


 白い布が、ふと静止した。


 揺らめいていた夢影の身体が、一本の軸を得たかのように正立する。霧がその周囲で薄く円を描き、空間そのものが「型」を受け入れる準備を始めていた。


 黒い染みが、布の表面をゆっくりと這い上がる。染みは線となり、線は面となり、やがて硬質な輪郭を帯びていく。夢影の上半身に、漆黒の鎧が組み上がった。重なり合う札、結ばれた紐、無駄のない構造。装飾はなく、機能だけがそこにあった。


 顔の位置には、白く塗り潰された面が嵌め込まれる。目も口も刻まれていない。ただ、平滑な白が、感情の入り込む余地を拒むように存在していた。


 夢影の右手に、細長い影が収束する。


 刀だった。


 鞘に収まりきらぬ刃が、半ば抜き放たれた状態で静止している。磨かれた鋼ではない。それでも刃の縁には、現実と夢の境界が黒く滲み、触れれば切断されるのが物質か概念か、判別できない気配を放っていた。


 足元では、一反木綿の名残がひらりと揺れている。地に足をつけているようで、どこにも属していない。武者の姿は完成しているはずなのに、存在の根だけが夢の深層に残されていた。


 武者は、ゆっくりと刀の柄に手を添えた。


 抜こうとしたわけではない。ただ、そこにあることを確かめるような仕草だった。


 白い面が、わずかに傾く。


 その動きに、敵意も、服従もなかった。ただ、定められた「役割」を待つ静けさがあった。


 夢影は、形を得た。

 だが、それが守るための型なのか、斬るための型なのかは、まだ決まっていない。


 霧の奥で、境界が微かに鳴る。


 武者は刀を携えたまま、エルドの一歩後ろに立った。

 影のように、しかし確かな重みをもって。


 夢が選んだ「和」の形が、ここに定まろうとしていた。



---



◆「忠」ルート《忠誠の型》


 武者は静かに刀を収め、膝を折る。白い面を伏せるその姿は、命令を待つ兵ではなく、役割を受け入れる器のようだった。忠誠は言葉ではなく、存在の向きとして示される。エルドの意志に呼応するたび、武者の輪郭は安定していくが、その分、夢影としての自由は薄れていく。守護と引き換えに、思考を手放した存在は、主と運命を共有する道へと近づいていく。



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◆「斬」ルート《境界を斬る》


 武者の手が柄を強く握り、刀が完全に引き抜かれる。刃が空を切った瞬間、斬られたのは物質ではなく、重なり合っていた層だった。夢と現実、原因と結果、その継ぎ目が白く裂け、道とも傷ともつかぬ痕が残る。武者は斬ることで存在意義を定めていくが、その一振りごとに、元あった秩序は静かに崩れ始める。



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◆「封」ルート《名による拘束》


 エルドが「アラクタレスト」と唱えた瞬間、武者の足元に符のような光が走る。刀は抜かれぬまま固定され、白い面の奥で何かが止まる。封印は消滅ではなく、役割の凍結だった。武者は完全な従者にも、破壊者にもならず、封じられた可能性として同行することになる。だが、封じた名が効力を持つ限り、解かれる条件もまた、静かに積み上がっていく。



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