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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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「分」―《古代の兵士》

◆「分」ルート《誤差残存 ― 断絶兵装の章》




 門の内側は、距離が定まっていなかった。

 一歩踏み出すごとに、進んでいるのか、近づかされているのかが曖昧になる。空間は伸縮を繰り返し、時間だけが一定の速度で擦り切れていく。



 そこに立っていたのは、兵士だった。



 砕けた鎧は、修復されることを拒むように歪み、胸部には致命傷の痕跡が残っている。だが血はなく、腐敗もない。

 生き残った存在ではない。

 死にきれなかった存在でもない。



 本来なら成立しなかった分岐に取り残された、“計算外”の残留物。



 兵士の足元では、時間が均等に分断されている。

 一歩ごとに区切られた不可逆の区画。

 戻ることも、飛び越えることもできない。



 エルドが視線を向けた瞬間、兵士の輪郭が一瞬だけ揺らいだ。

 この存在が、すでに何度も書き換えられ、そのたびに削除されきれなかったことを示している。



 兵士は、恨みを向けない。

 哀れみも、救済も求めない。

 ただ、“結果だけが残る世界”を、その身で証明していた。



 世界を書き換える力は、奇跡ではない。

 優先順位を操作する行為だ。

 選ばれなかったものは消える。

 だが、完全には消えない。



 兵士の背後で、いくつもの戦場が重なり合う。

 勝利した歴史。

 敗北した歴史。

 そもそも発生しなかった歴史。

 それらが同時に存在し、互いに干渉せず、ただ“誤差”として沈殿している。



 記憶核が反応する。

 甘美な衝動。

 必要なものだけを残し、不要な犠牲をなかったことにする誘惑。



 だが、兵士は動かない。

 その存在自体が、警告だった。




「力は選べるが、結果は選べない」




 言葉が落ちた瞬間、兵士の背後の戦場が崩れ落ちる。

 消滅ではない。

 計算からの除外。



 兵士の姿も、そこで固定された。

 消えもせず、救われもせず、ただ“ここにいる”。



 門の向こうで、世界は次の段階へ進む準備を整えている。

 エルドがどれほど慎重に選ぼうと、

 選ばれなかった可能性は、必ずどこかに溜まり続ける。



 このルートで得られたのは、力ではない。

 覚悟でもない。



 進めば、誰かが誤差になる。

 その事実を、否定できなくなる視座だけが残った。



 兵士は、最後まで振り返らなかった。

 世界が前に進むたび、その背中が増えていくことを、知っているかのように。




---




「闘」ルート

去ろうとする古代兵士を呼び止め、避けられない戦いを選ぶ道。すでに歴史から零れ落ちた存在との交戦は勝利も敗北も確定せず、戦う行為そのものが世界の誤差を拡大させていく。兵士を倒しても何も回収されず、残るのは力を行使したという事実だけの、無補償の対決。



---



「刀」ルート

空間そのものを媒介に刀を形成し、断ち切る手段を得る道。形成された刃は使用者にも等しく代償を課すもろ刃であり、振るうたびに記憶と存在が削られていく。それでも選ばれる唯一の武装、世界と自身を同時に切り裂く決断。



---



「冬」ルート

氷の呪文によって時間と空間を凍結し、兵士との関係性そのものを停止させる道。勝敗を結ばず、誤差を破壊も修復もせず封じ込める選択。進行も後退も拒んだ結果として残る、永続する静止状態。




◆さぁ、選びたまへ

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