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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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DC 《黒輪:輪道の執行者》

◆ DC《黒輪:輪道の執行者》



《循環の深域 ― 名を持たぬ選択》



 境界は、音もなく閉じた。


 光の道と影の道、その双方が溶け合う地点で、世界は一度、呼吸を止めたように静まり返る。風は止み、時間の流れすら曖昧になる。そこに残されたのは、選択を終えたという事実だけだった。


 DCルートとは、力を得る道でも、拒絶する道でもない。

 それは「循環を受け入れる」という、最も理解されにくい選択である。


 足元に広がるのは、円環状に重なり合った紋章の層だった。金でも黒でもない、名づけられていない色が、静かに脈打っている。それらは過去の選択、失われた可能性、そしてまだ生まれていない未来の痕跡だった。


 この場に立つ者は、何かを奪われたわけではない。

 だが、何かを即座に与えられることもない。


 代わりに、世界そのものの「流れ」を知ることになる。


 かつて断絶した王統。

 消えたはずの誓約。

 継承されなかった名と、語られなかった歴史。


 それらは失敗でも欠落でもなく、循環の途中で生じた“間”だったと理解される。断ち切られたのではなく、まだ回収されていなかっただけなのだ。


 空間の奥で、巨大な構造体が姿を現す。玉座のようにも見え、祭壇のようにも見えるそれは、何者にも所有されていない。近づくにつれ、無数の声なき記憶が、波のように押し寄せてくる。


 そこに刻まれているのは命令ではない。

 問いですらない。


 ただ、「続いている」という事実だけが示されていた。


 DCルートにおいて重要なのは、英雄的な決断ではない。犠牲的な覚悟でもない。必要なのは、選択を“終わらせない”という姿勢だった。


 何かを決めきらないことは、弱さではない。

 未来に余白を残すという、極めて高度な選択である。


 この地点で得られる力は、即効性を持たない。戦況を覆す技でも、世界を書き換える権能でもない。その代わり、流れを読む感覚が宿る。歪みが生じる前兆、選択肢が狭まる瞬間、誰かが踏み外そうとする兆候。


 それらが、言葉になる前に理解できるようになる。


 世界は変わらないように見える。

 だが、確実に“壊れにくく”なる。


 このルートが正規である理由は明確だ。

 なぜなら、ここで選ばれたのは「終わり」ではなく、「続行」だからである。


 円環の中心で、紋章が静かに沈む。その瞬間、世界の奥深くで、別の歯車が噛み合う音がした。それは遠く、しかし確かな始動音だった。


 まだ名のない試練。

 まだ姿を見せない対立者。

 そして、循環を拒む存在。


 ここは、すべてを解決しない。

 だからこそ、次へ進める。


 光と影のどちらにも偏らないこの選択は、後に「分岐を生み続ける正道」と呼ばれることになる。その意味が理解されるのは、もう少し先の話だ。


 境界の向こうで、新たな階層が開き始めていた。

 そこでは、これまでの選択そのものが試されることになるだろう。


 循環は続く。

 物語も、まだ終わらない。



---



◆ 分岐①


黒鱗こくりんルート ― 受容の深化》


 循環の深域で得た感覚が、内側へ沈んでいく。

 世界の歪みを「正す」のではなく、「耐える」選択がここでなされる。


 身体の奥に、硬質な感触が芽生える。それは防御でも武装でもない。世界の衝撃をそのまま受け止め、流れに変換するための器官――黒鱗と呼ばれる性質だ。


 このルートでは、前に出て戦うことは少ない。代わりに、崩壊寸前の局面に立ち続ける役割を担う。破綻を一身に引き受け、周囲の選択肢を守る存在となる。


 力は静かで、目立たない。

 しかし一度崩れれば戻らない局面において、黒鱗の在り方は決定的な意味を持つ。


 後に、この選択が「世界を延命させた分岐」と呼ばれる理由が明らかになる。


 ――耐えた先で、次の循環が試される。



---



◆ 分岐②


黒剣こくけんルート ― 断絶の執行》


 循環を理解したうえで、それでも切ると決めた場合、この道が開く。


 黒剣は武器ではない。

 選択と選択の間に生じた“迷い”そのものを断ち切る概念である。


 このルートでは、曖昧さが許されない。

 進むべき道と、終わらせるべき可能性が明確に分かたれる。


 一振りごとに、世界は整理されていく。

 救われる未来もあれば、完全に閉じる可能性もある。


 代償として、循環の余白は急速に失われる。

 だがその分、物語は加速する。


 黒剣を選んだ者は、後戻りできない。

 その覚悟が、次章で「対峙」という形を取って現れる。


 ――切った先で、真の敵が姿を現す。



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