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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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DA 《黒輪:輪廻の断章》

◆ DA《黒輪:輪廻の断章》


《正規ルート:断罪継承篇》



 金色の風が完全に消え去ったあと、世界はひとつ呼吸を落としたように静まった。

 胸元で脈打つ黒珠は、もはや外へ力を放っていない。それでも、その存在感は増していた。静かなのに重い。沈黙しているのに、否定も肯定も逃さない。


 歩を進めるにつれ、足元の影が不自然に揺れ始めた。光源が変わったわけではない。影そのものが、意思を持って形を変えている。まるで記憶が地面に染み出し、実体を持とうとしているかのようだった。


 やがて影は分かたれ、円環を描くように周囲を囲む。黒輪が微かに振動し、刃の縁に刻まれた影紋が淡く揺らいだ。


 影の中から、ひとつの人影が現れる。

 姿形はよく似ている。しかし、目だけが違った。そこには迷いがない。希望もない。ただ、選ばなかったという事実だけが、冷たく宿っていた。


 それは敵ではなかった。

 かといって、味方でもない。


 ――かつて存在しえた、別の未来。


 選ばれなかった道の先で生き続けた可能性。

 守れたかもしれないもの。救えたかもしれない時間。切り捨てた結果として消えた世界。そのすべてが、ひとつの影として集約されていた。


 影は語らない。責めもしない。

 ただ、そこに立っている。


 黒珠が強く脈動した瞬間、胸の奥に重圧が落ちた。息が詰まり、視界がわずかに歪む。黒輪の刃が低く鳴り、影の輪郭が鋭く定まった。


 ここで問われているのは、正しさではない。

 選択の価値でもない。


 ――捨てたものを、理解しているか。


 影が一歩、近づいた。

 その歩みに合わせ、過去の断片が流れ込んでくる。立ち止まった瞬間。決めきれなかった分岐。選ぶことから逃げた時間。どれも小さな判断だった。だが、それらが積み重なり、今の道を形作っている。


 影は腕を伸ばす。触れれば、すべてを取り戻せるかのように。

 同時に、すべてを失うと分かるほどの確信もあった。


 黒輪が震え、鎖の一部が持ち主の腕に絡みつく。

 刃は外へ向いていない。内側へ、締めつけるように。


 ――断つ対象を、誤るな。


 影は、かつての可能性そのものだった。

 ここで斬れば、過去を完全に否定することになる。

 だが、斬らなければ、道は前へ進まない。


 静かな時間が流れる。

 影は待っている。選ばれるのを、ではない。終わらせられるのを。


 黒輪を構えた瞬間、刃の震えが止まった。

 迷いが消えたわけではない。ただ、向き合うと決めただけだった。


 刃が影を通過する。音はなかった。抵抗もない。

 影は斬られたのではなく、ほどけるように分解され、黒い粒子となって地面へ沈んでいく。


 消え際、影の表情がわずかに変わった。

 安堵とも、諦観ともつかない、穏やかな輪郭。


 影が完全に消えたとき、黒珠が深く脈打った。

 胸元に残ったのは、軽さではない。むしろ、確かな重みだった。


 黒輪の刃に、新たな紋が刻まれる。

 それは攻撃のための印ではない。断ち切った数を記す、不可逆の刻印。


 歩みを再開すると、世界の影はもはや揺れなかった。

 選ばれなかった未来は消えたのではない。道の下に沈み、支えへと変わったのだ。


 黒珠は告げない。

 正解も、目的も示さない。


 ただ、進む者に問い続ける。

 次に断つべきものを、理解しているか、と。


 前方で、空間の輪郭がわずかに歪んだ。

 新たな分岐が、すでに待っている。


 黒輪は静かに揺れ、次なる“選択”の存在を示していた。


 ――断章は、まだ終わらない。


 この道は、断ち切るたびに深くなる。

 そしていずれ、他者の未来に刃を向ける日が訪れる。


 それが救済か、断罪か。

 答えは、まだ先にある。




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◆ DAの四分岐を選択せよ

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■「継」ルート


《断罪の継承》


黒輪に刻まれた刻印が増え続け、

過去に断ち切られた選択と“同じ判断”を、再び迫られる道。


かつて捨てた未来と似た状況が繰り返し現れ、

同じ決断を“引き受け続けられるか”が試される。


黒珠は力を与えない。

ただ、過去の断罪を次の断罪へと継がせる。


覚悟を維持できれば、断罪は技ではなく「在り方」になる。



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■「承」ルート


《重みの受容》


断ち切った未来の重さが、

黒輪と肉体、そして精神に蓄積していく道。


選択のたびに行動は鈍くなるが、

判断は極端に揺らがなくなる。


このルートでは、

迷いを消す代わりに「即断できなくなる」。


黒珠は問い続ける。

それでも、その重みを承け続けるのかと。


耐え切れば、黒輪は“断罪を背負う器”へと変質する。



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■「輪」ルート


《選択の循環》


断ち切ったはずの未来が、

形を変えて再び立ち現れる道。


敵、仲間、出来事――

すべてが過去の分岐と呼応し、同じ構図を描く。


このルートでは、

黒輪は「斬る」ためではなく

循環を断ち切る一点の選択を求めてくる。


同じ構図を、違う決断で終わらせられるか。


成功すれば、輪廻そのものを歪める資格を得る。



---



■「郭」ルート


《境界の執行》


黒輪の影響が、自身の内側から外側へと拡張する道。


他者の選択、未来の可能性、分岐の“輪郭”が視えるようになる。

だが、見えるということは、

断つか否かを決めねばならないということでもある。


このルートでは、

黒珠は完全に沈黙する。

代わりに、世界そのものが問いを投げかける。


踏み越えれば、断罪は個人の力ではなく“役割”へ変わる。



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