DA 《黒輪:輪廻の断章》
◆ DA《黒輪:輪廻の断章》
《正規ルート:断罪継承篇》
金色の風が完全に消え去ったあと、世界はひとつ呼吸を落としたように静まった。
胸元で脈打つ黒珠は、もはや外へ力を放っていない。それでも、その存在感は増していた。静かなのに重い。沈黙しているのに、否定も肯定も逃さない。
歩を進めるにつれ、足元の影が不自然に揺れ始めた。光源が変わったわけではない。影そのものが、意思を持って形を変えている。まるで記憶が地面に染み出し、実体を持とうとしているかのようだった。
やがて影は分かたれ、円環を描くように周囲を囲む。黒輪が微かに振動し、刃の縁に刻まれた影紋が淡く揺らいだ。
影の中から、ひとつの人影が現れる。
姿形はよく似ている。しかし、目だけが違った。そこには迷いがない。希望もない。ただ、選ばなかったという事実だけが、冷たく宿っていた。
それは敵ではなかった。
かといって、味方でもない。
――かつて存在しえた、別の未来。
選ばれなかった道の先で生き続けた可能性。
守れたかもしれないもの。救えたかもしれない時間。切り捨てた結果として消えた世界。そのすべてが、ひとつの影として集約されていた。
影は語らない。責めもしない。
ただ、そこに立っている。
黒珠が強く脈動した瞬間、胸の奥に重圧が落ちた。息が詰まり、視界がわずかに歪む。黒輪の刃が低く鳴り、影の輪郭が鋭く定まった。
ここで問われているのは、正しさではない。
選択の価値でもない。
――捨てたものを、理解しているか。
影が一歩、近づいた。
その歩みに合わせ、過去の断片が流れ込んでくる。立ち止まった瞬間。決めきれなかった分岐。選ぶことから逃げた時間。どれも小さな判断だった。だが、それらが積み重なり、今の道を形作っている。
影は腕を伸ばす。触れれば、すべてを取り戻せるかのように。
同時に、すべてを失うと分かるほどの確信もあった。
黒輪が震え、鎖の一部が持ち主の腕に絡みつく。
刃は外へ向いていない。内側へ、締めつけるように。
――断つ対象を、誤るな。
影は、かつての可能性そのものだった。
ここで斬れば、過去を完全に否定することになる。
だが、斬らなければ、道は前へ進まない。
静かな時間が流れる。
影は待っている。選ばれるのを、ではない。終わらせられるのを。
黒輪を構えた瞬間、刃の震えが止まった。
迷いが消えたわけではない。ただ、向き合うと決めただけだった。
刃が影を通過する。音はなかった。抵抗もない。
影は斬られたのではなく、ほどけるように分解され、黒い粒子となって地面へ沈んでいく。
消え際、影の表情がわずかに変わった。
安堵とも、諦観ともつかない、穏やかな輪郭。
影が完全に消えたとき、黒珠が深く脈打った。
胸元に残ったのは、軽さではない。むしろ、確かな重みだった。
黒輪の刃に、新たな紋が刻まれる。
それは攻撃のための印ではない。断ち切った数を記す、不可逆の刻印。
歩みを再開すると、世界の影はもはや揺れなかった。
選ばれなかった未来は消えたのではない。道の下に沈み、支えへと変わったのだ。
黒珠は告げない。
正解も、目的も示さない。
ただ、進む者に問い続ける。
次に断つべきものを、理解しているか、と。
前方で、空間の輪郭がわずかに歪んだ。
新たな分岐が、すでに待っている。
黒輪は静かに揺れ、次なる“選択”の存在を示していた。
――断章は、まだ終わらない。
この道は、断ち切るたびに深くなる。
そしていずれ、他者の未来に刃を向ける日が訪れる。
それが救済か、断罪か。
答えは、まだ先にある。
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◆ DAの四分岐を選択せよ
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■「継」ルート
《断罪の継承》
黒輪に刻まれた刻印が増え続け、
過去に断ち切られた選択と“同じ判断”を、再び迫られる道。
かつて捨てた未来と似た状況が繰り返し現れ、
同じ決断を“引き受け続けられるか”が試される。
黒珠は力を与えない。
ただ、過去の断罪を次の断罪へと継がせる。
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覚悟を維持できれば、断罪は技ではなく「在り方」になる。
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■「承」ルート
《重みの受容》
断ち切った未来の重さが、
黒輪と肉体、そして精神に蓄積していく道。
選択のたびに行動は鈍くなるが、
判断は極端に揺らがなくなる。
このルートでは、
迷いを消す代わりに「即断できなくなる」。
黒珠は問い続ける。
それでも、その重みを承け続けるのかと。
→
耐え切れば、黒輪は“断罪を背負う器”へと変質する。
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■「輪」ルート
《選択の循環》
断ち切ったはずの未来が、
形を変えて再び立ち現れる道。
敵、仲間、出来事――
すべてが過去の分岐と呼応し、同じ構図を描く。
このルートでは、
黒輪は「斬る」ためではなく
循環を断ち切る一点の選択を求めてくる。
同じ構図を、違う決断で終わらせられるか。
→
成功すれば、輪廻そのものを歪める資格を得る。
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■「郭」ルート
《境界の執行》
黒輪の影響が、自身の内側から外側へと拡張する道。
他者の選択、未来の可能性、分岐の“輪郭”が視えるようになる。
だが、見えるということは、
断つか否かを決めねばならないということでもある。
このルートでは、
黒珠は完全に沈黙する。
代わりに、世界そのものが問いを投げかける。
→
踏み越えれば、断罪は個人の力ではなく“役割”へ変わる。




