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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第六の試練

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№2 《伝統を守り、記憶を正統のまま受け継ぐ道》

◆ №2《記憶の王座 ― 正統継承》



 穏やかな光の道へ足を進めた瞬間、核の内部に満ちていた揺らぎが静まり返った。鋭く分かれていた未来の気配は、ひとつの流れへと束ねられ、深い水底へ沈む砂のように落ち着いていく。記憶の層は再び秩序を取り戻し、王家の歴史が積み重ねてきた重さだけが、確かな質量として残された。


 禁忌の紋章は、完全に閉ざされたわけではない。ただ、触れられる位置から一段深い場所へと沈められた。そこは否定でも忘却でもなく、必要以上に掘り起こされることのない保管庫のような領域だった。選ばれなかった系譜は、再び沈黙へと戻る。その沈黙は、恐怖から生まれたものではなく、世界を保つために選ばれた静けさだった。


 歴代の王影は、ゆっくりと光の中へ溶けていく。敗北の夜も、勝利の祝祭も、迷いと後悔も、すべてが均され、ひとつの流れとして核へ還元されていった。そこに優劣はなく、正しさを競う秤も存在しない。残るのは、続けるという行為そのものの重みだった。


 王家が歩んできた道は、常に選択の連続だった。救われなかった可能性、語られなかった名前、断ち切られた未来。そのすべてを背負いながらも、なお続いてきたという事実だけが、王統の本質として浮かび上がる。完全であることよりも、崩れずに在り続けること。その価値が、記憶の深層で静かに肯定されていく。


 大樹の根は再び安定し、核の構造は元の均衡を取り戻した。継承の法則は書き換えられないまま、より強固に固定される。未来の選択肢は増えない。だが、減ることもない。一本の道は細く見えて、その実、無数の分岐を内包したまま続いている。


 世界の表層では、何も変わらないだろう。王家の象徴は揺るがず、制度は滞りなく機能し、民の暮らしもこれまで通りに流れていく。変化が起きないこと自体が、ひとつの成果として扱われる。混乱も革命も起こらない代わりに、長い時間をかけて培われた安定だけが、確実に次代へ渡される。


 禁忌が再び語られることはない。だが、完全に消え去ったわけでもない。核の最深部には、選ばれなかった可能性が折り畳まれたまま眠っている。それは未来の誰かが必要としたとき、初めて開かれる予備の歴史だ。今はまだ、世界がそれを求めていないだけだった。


 記憶の王座は、崩れずにそこに在り続ける。形を変えることもなく、ただ重さを増した。継承とは革新だけを意味しない。守り抜くこともまた、確かな選択であると、核は静かに証明していた。


 光が完全に収まったとき、過去と未来の境界は再び閉じられる。残されたのは、揺るがぬ王家の系譜と、語られぬ真実を抱えたまま進む世界の姿だった。


 それは変革の物語ではない。

 しかし、断絶を拒み続けた、もうひとつの結末である。






















《アナザーエンド》

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