CC 《夢影を実体化させる》
◆CCルート《夢影を実体化させる》
深層の静けさは、眠りそのものの形をしていた。空間はゆるやかに揺らぎ、どこにも属さない白い霧がたえず立ち昇っている。そこに漂う影たちは、輪郭を得ることのないまま、感情だけをにじませて揺れていた。
エルドは胸元に触れ、温かな脈動を確かめた。掌には「夢界の欠片」が淡い蒼光を湛えている。その光は、周囲の夢影を静かに引き寄せはじめた。影たちはためらうように揺れ、やがて一つが選ばれたかのように前へ滑り出る。
それは、他の影よりも薄く、軽く、かすかな風にすら形を保てないほど脆い存在だった。それでも、光に触れた瞬間、影の内側に筋が走り、輪郭がゆっくりと浮かび上がる。
白い布が天から垂れ下がるように広がり、ゆるやかに波打ちながら形を整える。上半身は中性的で、顔だけはなかった。そこには何もなく、空虚だけが静かに横たわっている。下半身は布となって揺らぎ、一反木綿のように風もないのに舞い上がり、漂う。手の先と、布の先端は黒く染まり、夢の境界そのものが滲み出しているかのようだった。
やがて、影の胸の奥から、かすれた機械音のような振動が生じた。
――ふっ……ふっ……
音の正体は声とも呼べないほど無機質で、温度を持たない。しかし、その響きには微細な感情のような粒子が含まれていた。まるで、生まれたばかりの意志が、世界に触れる方法を探しているかのようだった。
光が夢界の欠片から弧を描いて影へ注ぎ込まれるたび、白い布の縁が揺れ、黒い染みが脈打つように震える。境界が現実へと馴染んでいく。存在が重たくなり、影が足元の大地にわずかに沈む。
その動きは、生まれるというよりも、夢がこちら側へ滲み出す過程のようだった。輪郭の固まるたび、影は微かに頭を傾け、目のない顔でエルドを「見る」。
霧の深層が震えた。影の実体化に呼応するように、周囲の夢影がざわめき、色や形のない感情が渦を巻く。一つの存在がこの世界を越えようとする瞬間、夢界全体がそれを観測しているかのようだった。
――ふふ……ふっ……
柔らかな布がふわりと揺れ、影はゆっくりと前へ進んだ。足はなく、歩いているのか浮いているのか判断できない。ただ、揺れる白布だけが進行を示していた。
エルドの周囲の景色が変わる。夢の深層は静かに亀裂を生じ、光の筋が入り込み、現実側の気配が流れ込む。影の存在が、夢の法則をわずかに書き換えていた。
黒く染まった指先が空を切るように広がり、境界が触れた部分に小さな歪みが生じた。そこには、現実と夢の境界面が折り重なるように揺らめき、淡い光の筋が道となって立ち上がった。
影はその道の先を示すように、音のない動きで顔を持たぬ頭を向けた。
――フッ……フ……
それは呼吸にも似た、あるいは問うような、無機質な響きだった。
夢界の欠片が最後の光を放ち、影の胸元で溶けるように吸い込まれた。その光が、影の白布と黒い縁を柔らかく照らす。影は完全な実体を得たわけではない。それでも、世界に触れるだけの「重さ」と「存在感」を確かに宿していた。
霧が静かに晴れ、境界の道が一筋、前へ伸びる。
影はゆっくりとエルドの隣に並び、白布をひらめかせながら進む準備を整えた。
夢から生まれた存在は、まだ何者でもなく、どこへ向かうのかも定まっていない。
しかし――その姿は確かに、彼の旅路に新たな形をもたらそうとしていた。
――ふっ……ふふ……
無機質なその響きだけが、深層の静寂に淡く残った。
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◆「和」ルート
夢影の白い身体が、静かな揺らめきとともに固まり、漆黒の鎧を纏った武者へと変化する。
顔の部分だけは白く塗りつぶされた面のようで、表情は一切読めない。
手には長い刀。鞘から半ば抜き放たれた刃が、夢の世界の光を鈍く反射している。
足元は一反木綿の名残がひらりと揺れ、現実と虚の境界が滲んだまま立っている。
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◆「洋」ルート
夢影の輪郭が波紋のように広がり、銀色の板金鎧を纏う騎士の形に収束する。
兜の面には何も刻まれず、ただ真っ白な空白が広がっている。
右手には剣、左手には盾。いずれも黒い縁取りが施され、境界の狭間を象徴している。
足元に残る布の影が風もないのに揺れ、夢の深層との繋がりを示している。
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◆「中」ルート
夢影の姿がほどけるように形を変え、**上半身裸の武術家**へと変貌する。
筋肉のラインは確かに人間のものだが、顔だけは不自然なほど真白で、表情も年齢も不明。
武器は肉体そのもの。拳の先と布の端が黒く染まり、境界を殴り抜く力を象徴している。
腰から下には夢影の布の名残が薄く揺れ、現実の重力とは異なる動きを見せている。




