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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第五の試練

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CB 《夢路を繋ぎ直す》

◆CBルート《夢路を繋ぎ直す》



《アナザーエンド:因果回廊再編》



 夢界の奥へ進むにつれ、空間は徐々に細り、広がりを失っていった。上下左右の感覚は残っているものの、距離という概念が曖昧になり、歩を進めても前進しているのか、同じ場所を巡っているのか判別がつかない。夢界は方向を拒み、意志だけを試していた。


 やがて視界の先に、無数の細い光の線が浮かび上がった。蜘蛛の糸のように絡まり、途中で断ち切られ、宙に漂っている。それらは夢路だった。本来ならば夢と夢を結び、未来へ流れていくはずの経路。だが今は、途中で途絶え、行き場を失ったまま停滞している。


 近づくほどに、時間の感覚が歪み始めた。数歩進んだだけのはずが、長い歳月を経たような疲労が残る。逆に、長く留まっていたはずの瞬間が、刹那のように消えることもあった。断たれた夢路は、過去と未来の接続不良そのものだった。


 胸元で夢界の欠片が震えた。淡い蒼光が揺らぎ、やがて砕ける兆しを見せる。ためらいなく欠片を解放すると、結晶は音もなく崩れ、無数の光粒へと変じた。光は風のように広がり、漂う夢路へと吸い込まれていく。


 光粒が触れた瞬間、断ち切られていた線が微かに脈動した。失われていた連続性が、慎重に、しかし確実に修復されていく。繋がり直された夢路は、以前と同じ形ではなかった。より細く、より不安定で、だが確かな方向性を持っている。


 修復された夢路を辿ると、複数の時間層が重なって見え始めた。過去に存在した選択、実行されなかった行動、意識の奥で眠ったまま消えた決断。それらが一本の道として再構成され、未来へ向かう流れを取り戻していく。


 夢界はそれを歓迎もしなければ、拒絶もしなかった。ただ静かに許容している。だが、完全な修復ではないことは明らかだった。繋ぎ直された夢路は、かつての一本道ではなく、複数の可能性が並走する回廊へと変質している。


 夢路を繋ぐ行為は、過去を改変することではない。失われたはずの選択肢に、再び「通過可能」という性質を与えるだけだった。結果は固定されない。現実に戻ったあと、どの可能性が顕在化するかは、無数の偶然と判断に委ねられる。


 やがて、夢界全体がゆっくりと収縮を始めた。修復された夢路が、ひとつずつ折り重なり、見えない回廊として折り畳まれていく。空間の中心に、目に見えない「因果の核」が形成されているのが感じ取れた。


 そこに干渉することはできない。ただ、その存在を知覚することだけが許されている。因果の核は、これから先の出来事に微細な分岐を生み出し続けるだろう。大きな変革ではない。だが、積み重なれば運命の輪郭を変えるには十分な歪み。


 夢界の欠片は完全に失われた。しかし、その代償として、夢路の再接続という結果が残された。欠片という形は消えても、その作用は現実の裏側に根を張り続ける。


 境界が開き、現実への帰還が始まる。夢界の光景は薄れ、修復された夢路だけが、見えない地図として意識の奥に沈んでいく。目覚めた後も、その全貌を思い出すことはできないだろう。ただ、選択の直前に感じる微かな引力として、その影響は現れる。


 進むべき道が、ひとつに定まらない感覚。回避したはずの出来事が、別の形で再訪する兆し。選ばなかった可能性が、偶然という仮面を被って立ち現れる。


 夢路は繋がった。

 だが、それは確定した未来への道ではない。


 現実は以前よりも複雑になり、因果は静かに編み直された。一本道だったはずの運命は、気づかぬうちに回廊へと姿を変えている。


 戻る世界は同じに見える。

 しかし、その内側では、無数の「あり得たはずの未来」が、今も並走し続けていた。






















《アナザーエンド》

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