Aルート 光よ、道を示せ
◆①《蒼の道》 Aルート:「光よ、道を示せ」――と唱える
エルドは浮かび上がる三つの文を見つめた。
どれも“正解”であるかのような装飾をまとい、蒼い広間に溶け込んでいる。
しかし、その奥底には明らかに異なる波長があった。
「光よ、道を示せ」
その言葉は、まるで見えない何かの奥に潜む真実に触れるような響きを持っていた。
光が道を示す――
それは迷宮において最も基本であり、最も古くから伝わる“導き”の象徴。
エルドは低く息を吐き、その言葉を静かに紡いだ。
「……光よ、道を示せ」
発した瞬間、広間が震えた。
壁面の蒼い紋様が一斉に輝き、浮遊していた光文字が大きく脈を打つ。
まるで心臓が鼓動し、長い眠りから目覚めるように。
次の瞬間――
光が爆ぜた。
広間全体が淡金色に染まり、エルドは思わず腕で目元を覆った。
だが、光は痛いほど強烈なのに、不思議と暖かい。
寒さも、恐れも、胸の奥に沈んでいた小さな影すらも溶かしていくような心地よさがあった。
やがて光は収束し、静かな波となって広間を一周した。
それはまるで、古い知識が承認するような“頷き”。
――選択は正しかった。
そう告げるかのように、光文字はひとつ、またひとつと集まり、エルドの胸の前で渦を巻いた。
それは星を凝縮したような、透明度の高い球体を形成し、息をのむほど美しかった。
「これは……?」
球体の中に、細い線が浮かび上がり始める。
ただの光ではない。
それは“地図”だった。
迷宮の内部構造が、絡み合う枝のような線で描かれ、さらにその一部が淡く点滅している。
――導きの核心へ向かう道。
球体が震え、ひとつの線がエルドに向けて伸びた。
まるで「ここだ」と示すように。
「……この先に、真の試練があるのか」
迷宮はただの空間ではない。
意志を持ち、訪れる者の選択に応じて姿を変える。
今目の前にあるのは、迷宮自身が“エルドを認め”、次の段階へ進む道を与えている証だった。
光の線が広間の端へ伸び、石壁の一部を照らした。
ずっと硬い岩盤にしか見えなかった壁が、光を受けた瞬間、ゆらりと歪み始める。
石ではない。
光が消えた部分から、透き通った“水”のような膜が広がっていく。
――通路だ。
新たに開かれたその扉は、湖の底へ続くような蒼の輝きを放っていた。
奥は見えない。
しかし、立っているだけで知恵が刺激されるような、静謐さと深淵の気配が漂っている。
エルドは一歩前へ踏み出す前に、開いた手を胸元へ落とした。
光球はゆっくりと彼の手のひらに吸い込まれ、淡い紋様となって刻まれる。
《蒼の加護:識導の紋》を獲得した。
思考が澄みわたり、迷いが薄れる。
まるで“必要な時、必要な知識に手が届く”ような不思議な感覚が広がっていく。
「行くしかないな……」
膜の向こうから、静かな波音が聞こえた。
湖でも、雨でもない。
何か古い記憶のようでいて、まったく知らないものの気配。
エルドは躊躇わず、蒼い通路へ足を踏み入れた。
その瞬間、世界がふたたび音を失い、
代わりに――
低く、重い声が響いた。
――次なる問いへ進むがいい。
――汝が知識の価値を試すために。
音が戻った時、エルドはすでに新たな試練の場に立っていた。
◆ 次の選択肢(Aルート:第二段階の試練)
❶. 《観察の光》―「万物の姿を映す道」へ進む
光球が鏡のように輝く。
隠された真実や幻影を見抜く試練。
❷. 《洞察の光》―「心の声を読む道」へ進む
淡く脈動する光。
他者の意図、過去、感情を読み取る試練。
❸. 《未来の光》―「可能性を選ぶ道」へ進む
青白い光がまるで星のように瞬く。
“未来の分岐”を見て、正しい一手を選ぶ試練。




