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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第五の試練

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AC 《破綻の継承》

◆ AC 《()(たん)(けい)(しょう)》 ― “影の息脈”



 光に満ちた核の中心で、エルドはわずかな違和感を感じていた。王統の誓約が本来放つはずの純粋な輝き。その奥底に、微細な揺らぎがひそんでいる。光の脈動に紛れ、まるで息を潜める獣のように、影が静かに寄り添っていた。


 その揺らぎは決して敵意を放ってはいない。ただ存在していた。光のなかにありながら光に染まらぬ、輪郭の曖昧な気配。触れれば崩れ、しかし触れなければ永遠に姿を持たない。王家の長い歴史の隙間に溜まったような、忘れられた息遣いだった。


 エルドは核に触れた手をゆっくりと引き寄せる。光が彼の腕へ、胸へ、そして背へと巡りながら、微かな黒い流紋を抱き込むように巻きついた。それは不吉ではなく、古い印象をまとっていた。途絶えた言葉のように、沈黙の中で長く待ち続けていた意志。


 光の大樹の中心は、静けさを湛えたまま揺れる。天井に広がる幕には、歴代の王たちの影が薄く浮かび、彼の選択を見守っていた。だが彼らの背後、さらに奥深くにはもう一層の影が沈んでいた。正式な記録にも残らぬ、名を剥奪された王の残滓。かつて誓約を拒んだ者の意志が、その揺らぎとなってここに潜んでいる。


 エルドは一歩、光と影の境へと踏み出した。足元の道は金色に光りながらも、影が寄り添うように淡い黒を差し込んでいく。決して濁らず、しかし明るさにも屈しない。二つの相反する要素が、矛盾のまま共存する道だった。


 大樹の中心は、通常の誓約であれば静謐さを保つ場所である。しかしエルドの進む軌跡に応えるように、木の内部に隠れていた層が一つ、また一つとひらかれていく。光の裏側には、同じ構造の“影の節”が存在し、長い年月のあいだ封じられたまま硬く閉じていた。


 その節は音もなく震え、微かな亀裂をのぞかせる。そこから漏れ出る力は、破壊ではなく、形を失った未来の余熱だった。かつて王家が手放した可能性。選ばれなかった道。誓約から零れ落ちた意志。影とはその集合体であり、その意志は、誰かに引き継がれることをただ静かに待っていた。


 エルドの胸に流れる光が、影の節に触れた瞬間、二つは互いを押し返すことなく溶け合った。光は影へ沈まず、影は光を曇らせない。どちらも偏らず、その境界で淡い波紋を広げる。彼が持つ“継ぐ覚悟”が、二つの力に形を与えていた。


 大樹の内部が大きく明滅し、これまで閉ざされていた層がいっせいにひらいていく。金色の紋章と、墨のように薄い黒の紋章が対になって浮かび、螺旋を描きながら空洞全体を覆った。光と影の紋は互いに敵対することなく、ひとつの模様として整っていく。


 王家の正統の力が“守る”ための枝なら、影の力は“変える”ための枝だった。二つは互いを拒絶する存在ではなく、かつて一本だった可能性の分岐だった。


 エルドが手を胸に寄せると、そこから静かに光があふれ、同時に影の薄い紋も淡く浮かび上がった。胸の中心で二つの力が重なり、まるで心臓の鼓動のように規則正しく脈打つ。彼の体を流れる力はどちらにも傾かず、しかし確かな重みを持っていた。


 大樹の内部に、風が走る。金色の葉が舞い、影の葉のような黒い燐片もそれに寄り添うように混じり合う。どれも軽やかで、脅威の気配はなかった。ただ、新しい流れが生まれる前の静かな変化だった。


 エルドの前方に道があらわれる。それは光だけの道ではなく、影だけの道でもなかった。二つが規則正しく交互に脈打ちながら続く、これまで誰も歩いたことのない軌跡。


 大樹の核は静かに輝き、その中心には金と黒の紋がひとつの輪を成していた。それは過去にも未来にも属さない、今この瞬間にだけ生まれた“継承の形”。


 エルドは迷いなく一歩を進めた。

 光と影はその歩みを迎え、静かに共振するように震えた。


 新しい王家の流れが、深く、確かに動き始めていた。



◆ AC 《破綻の継承》 ― “影の息脈”

分岐:五つの選択肢


 光と影を両に抱いた新たな力を胸に宿し、エルドは深く息を整える。大樹の中心、開かれた層の奥では、五つの紋章がゆっくりと浮上し始めていた。金でも黒でもない、どちらにも寄らぬ中間の輝き。まるで彼の選択を待つために、時の底から浮き上がった“未来の輪郭”だった。


 五つの紋章は、どれも異なる脈動を放っている。どれも危険ではなく、しかし強烈な変革性を秘めていた。それは王家が封じ、歴史が見なかった可能性。それぞれが、エルドにしか歩めない新たな道として提示されていた。


 光と影が静かに揺れる中、五つの選択肢が静かに形を結ぶ。


---


◆ 選択肢№3


《影枝の調停者》

― 光と影を均衡させ、王家の“両面”を共存させる道。


 エルドの内に宿る二つの力を、ひとつの体系へ統合する試み。

 王家における長年の矛盾を解消し、対立する力を調整し続ける“調停者の王”となる。

 この道は安定と再生をもたらすが、常に揺らぎ続けるバランスを保つ繊細な覚悟が求められる。


⇒ 王家の進化を“共存”によって成すルート。


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◆ 選択肢№4


《失われた王枝の復元》

― 歴史から消された“影の王統”を再び表舞台へ引き戻す道。


 影の節に残る記憶をたどり、途切れた血統や、封じられた思想を復元していく。

 王家の正史に記されなかった人物、消された計画、失われた儀式――

 それらを繋ぎ直し、影の王統を“第二の正統”として蘇らせる。


⇒ 王家の形を二つにし、歴史を再編する大胆な分岐。


---


◆ 選択肢№5


《影息の浄化者》

― 影の力を浄化し、王家の“重荷”を未来へ持ち越さない道。


 影の揺らぎを破壊せず、否定もせず、そのまま新しい形へと純化する。

 過去の誤ち、選ばれなかった未来、封じられた意志を、

 エルド自身が抱えながらも、綺麗な流れとして整えていく。


 その結果、王家は影を持たぬ新たな始まりを迎えることになる。


⇒ 王統のリセットと再誕を担う浄化ルート。


---


◆ 選択肢№6


《変革の王核》

― 核そのものを書き換え、王家の構造を根本から変える道。


 大樹の核に宿る“誓約の式”を、エルドの意思で組み替えていく。

 光と影の二極ではなく、まったく新しい力の循環をつくり出す。

 それは従来の王統に依らず、個の意志と選択によって継承される、全く異質の王家。


⇒ 王家を制度ごと変革し、未来の形を作り変える革命ルート。


---


◆ 選択肢№7


《影の伴走者》

― 影の意志を排除せず、独立した“相棒”として迎える道。


 影の揺らぎに宿る古い意志と共存し、

 光と影という二つの王家の精神性を並列で扱う。

 影はエルドの選択を否定せず、ただ別の視点として並び立つ。

 王の旅路は常に二つの観点で判断される、かつてない歩みとなる。


⇒ 王家史上初の“影との同盟”を結ぶ伴走ルート。


---


 五つの紋章が輝き、光と影を映しながら揺れている。

 どの道も破滅を招かず、しかしどれも王家の姿を変える。

 選んだ瞬間、王家の未来は大きく転がり始めるだろう。


 エルドの胸では、金と黒の紋章が静かに脈打っていた。

 その鼓動は、どの選択にも応える準備ができていると言うように、

 ゆっくり、大樹の内部に響き渡った。



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