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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第五の試練

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AB 《記憶の王座》

◆ AB 《記憶の王座》


―― 過去へ深く沈み、真実の根へ触れるルート



 核の紋章が静かに開いていく。花が綻ぶ音すら吸い込むような光の揺らぎの中で、空間は深い井戸のように沈黙をたたえていた。エルドの視界は、一層の輝きとともに薄膜を破り、遠い時の層へと溶け込んでいく。


 紋章の一つひとつが、歴代王の記憶へ直通する扉だった。気づけば、まるで世界そのものが透明な水となり、無数の像がその水面下へ沈んでいる。エルドは光の中に立ちながら、その中へ引き込まれるように、時代の記憶を受け取っていく。


 初めに現れたのは、荒廃した玉座の間だった。崩れた石柱、砕け散る天井、焦げた装飾。そこに膝をつくひとりの王影があった。肩に降り積もる灰は、敗北の夜の名残なのだろう。王影は静かに拳を握り、地へ額を寄せる。その姿が波紋となって消えると、別の光景が現れた。


 長い交渉の場。敵対する国の使節と向き合い、時に互いの声が震え、沈黙が重く落ちる。誰も血を流さずに未来を繋ぐため、ひとりの王が椅子に深く身を沈め、言葉を選び続ける場面だった。


 また別の記憶では、王都の鐘の音が高く鳴り響く。民の歓声、街路を照らす篝火。勝利と祝福の夜だ。王は高台に立ち、風に揺れる灯を見つめていた。喜びの中に、寂しさがひと雫だけ混じっていた。


 そして最後に、燃え落ちた古い玉座の間の影。そこに立つ王影が、静かに空へ視線を向けていた。焦げ付いた壁、灰の匂い、沈黙――わずかな後悔を抱えたまま未来へ託す人間の姿。


 それらが途切れることなく、次から次へと流れ込む。強さも弱さも、誇りも迷いも、どれもが王という存在が背負ってきた現実だった。光の層は重い。だが、その中に確かな温度もあった。


 やがて、核の奥でひとつの紋章が開いた。そこには、王家に封じられていた禁忌が眠っている。記憶ではない。より深い、血脈そのものに刻まれた情報だった。エルドは光が揺れるのを感じながら、その中へ意識を近づけた。


 禁忌は単純なものではなかった。古代の王が、未来へ続く血脈を守る代償として捧げた“代替の枝”――その選択は、誰にも語られず、ただ継承の奥に残されていた。王家は本来、二つの系譜に分かれていた。しかし、片方は歴史から消し去られている。理由も、記録も残されていない。ただ、その痕跡だけが核の影に焼き付いていた。


 その真実に触れた瞬間、空間が微かに震えた。光の幕が波打ち、影が揺れる。過去の王影が薄く現れ、その視線がエルドを射抜くように集まっていく。


 その時、ひとつの声が響いた。



「未来を変える覚悟があるなら、記憶を選べ」



 声は静かで、深く、遙かな年代の記憶の奥底から届くものだった。誰の声かは分からない。ただ、その一言が、空間全体の空気を変えた。


 エルドの足元には二つの光の道が現れた。どちらも真実へ通じるが、行く先はまるで違う。


---


▼選択肢№1


《禁忌を暴き、王家の未来を変革する道》


 隠された系譜を明らかにし、歴史から消えた血脈を再び世界へ戻す道。

 記憶の層に眠る真実を拾い集め、王家の継承の仕組みそのものを書き換える可能性を秘めている。

 ただし、その行為は大樹の核に刻まれた法則を揺るがす。

 過去の王たちが抱えていた痛みや犠牲の意味が、根本から変わってしまうこともある。


 光の道は鋭く細い。進めば、世界の形を変えるほどの重い選択が待つ。


---


▼選択肢№2


《伝統を守り、記憶を正統のまま受け継ぐ道》


 禁忌には触れず、王家が築いてきた継承の形を守り抜く道。

 過去の王の想いをすべて抱え、未来へ丁寧に運ぶ役目を選ぶ。

 影として消えた系譜は“必要な犠牲”であったと理解し、その沈黙もまた王家の歴史の一部として受け止める。


 光の道は穏やかで、広く、静かに未来へ続いている。



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