α³ 《祖霊の審判 》
◆ α³《祖霊の審判 ―“拒まれ続けた者の前進”》
(正規ルート:継承の章 α³)
光の大樹の根元から伸びる影の道を進むと、空気は急激に冷えた。金色だった世界は静かに色を失い、やがて蒼白い霞が立ち込める。その深奥に、エルドは足を踏み入れた。
そこは“境界の間”と呼ぶべき場所だった。
天も地も曖昧で、光は遠く、影だけが形を持つ。無数の人影が霞の中に浮かび、まるで風が姿を成したかのように揺れている。彼らはエルドの祖霊――血族の記憶が生んだ具現の群れであった。
その中心に、ひときわ濃い影が立っていた。
形は曖昧だが、ただそこに立つだけで圧があった。言葉は発さずとも、存在そのものが「審判」を担う者であると告げていた。
エルドが一歩踏み出すと、影の空気が震えた。
次の瞬間、胸の奥に重圧がのしかかり、呼吸が奪われる。怒りでも敵意でもない。ただ、無慈悲な「選別」の力だった。
――拒絶。
その一語だけが、音にもならぬまま世界の中心に響いた。
エルドは膝をつき、地面に手をついた。
自分の弱さを炙り出されるような、息苦しいほどの感覚。
だが、不思議と恐怖はなかった。これが血族の意志ならば、逃げてはならない――それだけが胸にあった。
再び立ち上がり、歩く。
また拒まれる。
影の風がぶつかり、意識が飛びそうになる。
気を抜けば倒れてしまうほどの圧力の中で、ただ一歩だけを前に出す。
歩みを進めるたび、影たちは僅かに揺れる。
嘲るでも脅すでもない。
ただ、“試している”のだ。
何度目の拒絶か、数える余裕もなくなった頃。
エルドは最後の影の前にたどり着いた。
その影は、他よりも輪郭が濃く、まるで生者のように明瞭だった。
影が腕を上げる。
世界全体が沈黙し、重圧が一点に収束した。
直後、押し寄せる拒絶の波。
全身が押し潰されるような重みが走り、視界が白く染まりかけた。
だが、エルドは踏みとどまる。
膝を折りそうになりながらも、地を踏んだ足を引き抜かず、その場に立ち続けた。
呼吸を絞るように、ただ一言だけ呟いた。
「……それでも、前に進む」
音は極めて小さく、影に届かないほどだったかもしれない。
しかし、その決意は世界に響いた。
重圧がふっと消える。
風が流れる。
影たちが静かに震え、数千の視線が一斉にエルドへ向いた。
その様子は、まるで“うなずいた”ように見えた。
中央の影がゆっくりと手を下ろす。
その手から光が滴り、地面に降り注ぐ。蒼白い世界の中で、純白とも黄金ともつかない光がひとつの形をつくり始めた。
霧が巻き、光が収束する。
やがてエルドの前には、ひとつの神器が浮かび上がった。
――《審判の衡珠》。
片方が黒、片方が白の結晶球が鎖で繋がれ、絶えず静かに揺れている。
その中心には淡い光が生まれ、揺らぎに合わせて脈動していた。
これは「価値を量るもの」ではない。
「揺れながら、なお立ち続ける者」を選ぶための衡だった。
影の群れがそっと姿を薄めていく。
拒まれ続け、なお退かなかった者にこそ、この衡珠は与えられる——そう告げるように。
最後の影が消えると、蒼白の世界は金色の風へと還った。
〈審判の衡珠〉はエルドの胸元に静かに収まり、脈動が彼の鼓動と同調する。
これは力ではない。
資格そのものの証明。
エルドは深く息を吸い、再び未来へ踏み出した。
拒まれ続けたからこそ手にした「揺るぎなき意思」を胸に抱いて。
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◆ 新たな分岐 AD/AE/AF(継承の章・上位派生)
AD 《衡珠の覚醒》
〈審判の衡珠〉がまだ「本来の力」を開いていないと知るルート。
エルドは衡珠の内部に眠る“二つの意志”に触れ、
そのどちらを引き出すかを選ぶことになる。
☆白珠:調和と導きの力
★黒珠:断罪と決断の力
どちらを選ぶかで、後の戦闘スタイルとエルドの精神性が大きく変化する。
さらに、このルートでは衡珠が「形態変化」し、武具へと姿を変えるイベントが起こる。
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AE 《祖霊の同行》
審判を乗り越えたことで、沈黙していた祖霊の一柱が
“守護霊”として同行を求めてくるルート。
その祖霊は姿なき存在であり、戦闘中に一瞬だけ干渉したり、
危機の際に未来の「可能性」を囁いたりする。
ただし――
エルドが迷いすぎればその声は沈黙し、
逆に進むべき覚悟を示せば、祖霊は強く力を貸す。
精神性と行動が物語に直接影響する“高度な連動ルート”。
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AF 《審判の継承者》
エルドが審判を受けた者ではなく、
“審判する側になり得る”資質を持つことを告げられるルート。
〈審判の衡珠〉を介し、
過去に封じられた「堕ちた血族」たちの影を解き放つ権限を持つ。
それは救済でもあり、処断でもある。
このルートでは、
エルド自身が他者の“未来を量る”立場になるため、
選択によって仲間の運命すら変わる重い物語へと派生する。




