A - ❸ 未来の光
◆ 《未来の光》 ―「可能性を選ぶ道」
青白い星粒が広がる。
通路はもはや“道”という形をしていなかった。
足元は薄い膜のような光に包まれ、踏み込むたびに小さな波紋が宙へ散る。床の感触が希薄で、まるで歩くたびに世界そのものを書き換えているかのようだった。
空はない。天井も壁もない。
代わりに、巨大な天蓋のような闇が広がり、無数の星々が淡く瞬いている。
その星はすべて、どこかで見たことのある光景の輪郭を持っていた。過去、現在、そしてまだ訪れていない可能性の数々が、淡い光の粒子となって浮遊しているのだと、エルドは直感で悟る。
足を踏み出すたびに、周囲の星がひらひらと流れ、さざ波のように揺れ動く。
そのどれもが異なる未来を映し、こちらを静かに観察しているかのようだった。
やがて、光は一点に集まりはじめた。
星々が渦の中心へ吸い込まれるように収束し、やがて三つの光流となって姿を変えた。
それらは蛇行する川のように大空に描かれ、それぞれ質感も温度も異なる未来を放っている。
エルドはその気配を受け取り、迷宮が提示する意図を理解する。
これは“正しい未来”へ進むための試練。
間違えれば別の世界へ落ち、正しければ核心へ至る。
光は静かに明滅しながら、未来の三つの道を提示した。
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◆ 次なる未来の分岐
α. 《継承の未来》 ― 過去の系譜を紡ぐ道
柔らかな金色の風が吹き抜ける。
温かく、確かな血族の記憶を感じさせる未来。
そこには多くの選択肢が重なり合っており、伝統と責任が重くのしかかる。
成功すれば強大な智慧を得るが、過去に縛られる危険もある。
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β.《断絶の未来》 ― すべてを手放し、孤独へ進む道
冷たい蒼光が伸び、周囲の星を飲み込む。
孤高の道。
誰とも関わらず、すべての判断を自分で下し続ける未来。
己の研ぎ澄まされた判断力のみを武器に進むが、心は風化しやすい。
最も険しく、しかし最も純粋な選択。
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γ. 《創造の未来》 ― 新たな道そのものを築く道
無色透明の光が円を描き、形を持たない未来が広がる。
そこには何も決まっていない。
束縛もない。
成功も失敗もあいまいで、完全な“未知”。
だが、その白紙の中には、迷宮すら予測できない自由が眠っている。




