「継」―《断罪の継承》
◆DA《黒輪:輪廻の断章》
分岐:「継」ルート
《断罪の継承 ― 英雄譚篇》
黒輪に刻まれた刻印は、戦いの証ではなかった。
それは「選び続けた痕跡」であり、過去を否定した数そのものだった。
歩みを進めるたび、世界はかつての分岐と似た構図を差し出してくる。
滅びに向かう都市。
力を暴走させる存在。
救えば多くが死に、断てば少数が消える、避けられない天秤。
黒珠は沈黙したままだ。
もう導きはない。
この道において、正しさは与えられない。
選ぶのは、ただひとり。
かつて一度、断ち切った未来と酷似した場面に立ったとき、胸の奥がわずかに軋んだ。
同じ選択を、再び行えるのか。
それは「正しいか」ではない。
――「それでも引き受けるか」という問いだった。
刃が振るわれるたび、刻印は増える。
増えるほど、迷いは減る。
減るほど、判断は速くなる。
英雄とは、迷わぬ者ではない。
迷いを知り、それでも進む者だ。
だが、この道は苛烈だった。
同じ構図が、形を変えて何度も現れる。
昨日救えなかった存在と似た顔。
かつて斬った力と同質の災厄。
「前もそうだった」という記憶が、刃を軽くする。
あるとき、気づく。
迷いが消えたのではない。
迷いに触れる前に、手が動いている。
それでも、立ち止まらなかった。
断罪は誰かが担わなければならない。
ならば、最も多くの痛みを知る者が引き受けるべきだと、そう決めた。
都市が救われ、戦火が止み、世界は名を与える。
断ち切る英雄。
選択を引き受ける存在。
語られるのは結果だけで、過程は語られない。
誰も知らない。
英雄が、夜ごと刻印を数えていることを。
消えた未来の重さを、ひとつひとつ思い出していることを。
英雄譚とは、栄光の物語ではない。
語られない部分にこそ、真実がある。
ある分岐で、かつて斬った存在と“ほぼ同一”の存在が現れた。
同じ力。
同じ危険性。
だが、ほんのわずかな違いがあった。
過去の自分なら、即断していた。
だが、刻印を重ねた今は、わずかに手が止まった。
それは弱さではない。
断罪を積み重ねたからこそ、生まれた重みだった。
英雄は理解していた。
同じ判断を繰り返すだけなら、この役割は“機構”に堕ちる。
だが、毎回ほんの一瞬でも迷えるなら、まだ人間でいられる。
刃は振るわれた。
それでも、そこには「考えた末の断」があった。
刻印は増え続ける。
だが、それはもはや「慣れ」の証ではない。
「迷いを経た回数」の証へと変わっていく。
やがて世界は理解する。
この英雄は、勝利の象徴ではない。
破滅を先延ばしにし続ける存在であることを。
それでも、人々は願う。
この手が止まらないことを。
選択を放棄しないことを。
英雄は歩き続ける。
未来を守るためではない。
「選ぶこと」を、世界から失わせないために。
断罪は技ではない。
在り方となる。
それは剣を振るう物語ではなく、
“選び続ける者”が、最後まで人間であろうとする物語だった。
この道の終わりに、栄光はない。
あるのは、数え切れない刻印と、
それでも迷い続けたという、ただひとつの証だけである。
◆「虚」ルート《断罪なき世界の誕生》
英雄の存在に依存し、人々は自ら選ぶことをやめていく。迷いはすべて英雄へ委ねられ、世界は静かに“思考を失った楽園”へ変質する。英雄は、救ったはずの未来が空虚になっていく現実と向き合う。
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◆「護」ルート《英雄狩り》
断罪を恐れる者たちが、英雄そのものを排除しようと動き出す。救った民からも刃を向けられ、英雄は「守るべき世界」に追われる存在となる。それでもなお、選び続ける意味が問われる。
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◆「悟」ルート《英雄の私的選択》
世界を救う断罪と、ただ一人を救う選択が対立する瞬間が訪れる。英雄譚が最も個人的な決断へと収束するとき、継いできた覚悟の真価が、初めて試される。




