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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第七の試練

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117/202

「継」―《断罪の継承》

◆DA《黒輪:輪廻の断章》

 分岐:「継」ルート

《断罪の継承 ― 英雄譚篇》



 黒輪に刻まれた刻印は、戦いの証ではなかった。

 それは「選び続けた痕跡」であり、過去を否定した数そのものだった。



 歩みを進めるたび、世界はかつての分岐と似た構図を差し出してくる。

 滅びに向かう都市。

 力を暴走させる存在。

 救えば多くが死に、断てば少数が消える、避けられない天秤。



 黒珠は沈黙したままだ。

 もう導きはない。

 この道において、正しさは与えられない。



 選ぶのは、ただひとり。



 かつて一度、断ち切った未来と酷似した場面に立ったとき、胸の奥がわずかに軋んだ。

 同じ選択を、再び行えるのか。

 それは「正しいか」ではない。

 ――「それでも引き受けるか」という問いだった。



 刃が振るわれるたび、刻印は増える。

 増えるほど、迷いは減る。

 減るほど、判断は速くなる。



 英雄とは、迷わぬ者ではない。

 迷いを知り、それでも進む者だ。



 だが、この道は苛烈だった。

 同じ構図が、形を変えて何度も現れる。

 昨日救えなかった存在と似た顔。

 かつて斬った力と同質の災厄。

 「前もそうだった」という記憶が、刃を軽くする。



 あるとき、気づく。

 迷いが消えたのではない。

 迷いに触れる前に、手が動いている。



 それでも、立ち止まらなかった。

 断罪は誰かが担わなければならない。

 ならば、最も多くの痛みを知る者が引き受けるべきだと、そう決めた。



 都市が救われ、戦火が止み、世界は名を与える。

 断ち切る英雄。

 選択を引き受ける存在。

 語られるのは結果だけで、過程は語られない。



 誰も知らない。

 英雄が、夜ごと刻印を数えていることを。

 消えた未来の重さを、ひとつひとつ思い出していることを。



 英雄譚とは、栄光の物語ではない。

 語られない部分にこそ、真実がある。



 ある分岐で、かつて斬った存在と“ほぼ同一”の存在が現れた。

 同じ力。

 同じ危険性。

 だが、ほんのわずかな違いがあった。



 過去の自分なら、即断していた。

 だが、刻印を重ねた今は、わずかに手が止まった。



 それは弱さではない。

 断罪を積み重ねたからこそ、生まれた重みだった。



 英雄は理解していた。

 同じ判断を繰り返すだけなら、この役割は“機構”に堕ちる。

 だが、毎回ほんの一瞬でも迷えるなら、まだ人間でいられる。



 刃は振るわれた。

 それでも、そこには「考えた末の断」があった。



 刻印は増え続ける。

 だが、それはもはや「慣れ」の証ではない。

 「迷いを経た回数」の証へと変わっていく。



 やがて世界は理解する。

 この英雄は、勝利の象徴ではない。

 破滅を先延ばしにし続ける存在であることを。



 それでも、人々は願う。

 この手が止まらないことを。

 選択を放棄しないことを。



 英雄は歩き続ける。

 未来を守るためではない。

 「選ぶこと」を、世界から失わせないために。



 断罪は技ではない。

 在り方となる。



 それは剣を振るう物語ではなく、

 “選び続ける者”が、最後まで人間であろうとする物語だった。



 この道の終わりに、栄光はない。

 あるのは、数え切れない刻印と、

 それでも迷い続けたという、ただひとつの証だけである。




◆「虚」ルート《断罪なき世界の誕生》


 英雄の存在に依存し、人々は自ら選ぶことをやめていく。迷いはすべて英雄へ委ねられ、世界は静かに“思考を失った楽園”へ変質する。英雄は、救ったはずの未来が空虚になっていく現実と向き合う。



---



◆「護」ルート《英雄狩り》


 断罪を恐れる者たちが、英雄そのものを排除しようと動き出す。救った民からも刃を向けられ、英雄は「守るべき世界」に追われる存在となる。それでもなお、選び続ける意味が問われる。



---



◆「悟」ルート《英雄の私的選択》


 世界を救う断罪と、ただ一人を救う選択が対立する瞬間が訪れる。英雄譚が最も個人的な決断へと収束するとき、継いできた覚悟の真価が、初めて試される。



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