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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第七の試練

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「明」―《揺らぎを受け入れる明度》

◆ 明ルート

《揺らぎを受け入れる明度 ― 終わらないための光》



 円環を越えた先で、導杖の灯は強まらなかった。

 だが、周囲の暗さが、わずかに後退した。


 光量が増えたのではない。

 世界の受け取り方が、変わったのだ。


 影は消えない。

 輪郭を保ったまま、そこに在り続ける。

 しかし、それらはもはや足を絡め取らない。

 恐れは残る。後悔も消えない。

 ただ、それらは“進めなくするもの”ではなく、“考えるための深さ”へと変質していた。


 この層では、すべてが同じ距離に並ぶ。

 成功も失敗も、希望も挫折も、同じ明度で置かれる。

 熱しすぎる感情は静まり、冷えすぎた思考は温度を取り戻す。

 世界は、極端にならなくなる。


 外界では、変化がゆっくりと広がっていく。


 衝突は、減る。

 決断は、急がれなくなる。

 人々は、間違いを抱えたまま歩く術を覚える。


 誰かが躓いても、それは敗北にならない。

 立ち止まっても、そこが終点にはならない。

 遅さは欠陥ではなく、選択肢のひとつとして受け入れられる。


 世界は、速く進まなくなる。

 だが、壊れなくなる。


 エルドは、導杖を静かに立てる。

 灯は、変わらぬ明度で呼吸している。

 燃え上がらず、消えもせず、ただ在り続ける光。


 この火は、勝利をもたらさない。

 革命を起こさない。

 代わりに、終わりを遠ざける。


 人々は、完璧を求めなくなる。

 正しさを武器にしなくなる。

 未完成のまま、共に在ることを選び始める。


 空は、同じ色で巡る。

 季節は、同じ順で訪れる。

 だが、その中で起こる出来事は、少しずつ柔らかくなる。


 傷は残る。

 しかし、それは世界から切り離されない。

 悲しみは消えない。

 だが、それは孤立しない。


 明とは、眩しさではなかった。

 それは、揺らぎを含んだまま、見渡せるという状態だった。


 エルドの歩みは、やがて層の奥へ溶けていく。

 導杖の灯は、誰かの足元を直接照らすことはない。

 だが、世界そのものが、少しだけ“見やすく”なっている。


 この終わりには、決着がない。

 勝者も、敗者もいない。

 ただ、続いていくという事実だけが、静かに残る。


 夜は訪れる。

 それでも、人々は進める。

 迷うことを許されたまま、歩き続けられる。


 明の層は、閉じない。

 物語も、閉じない。


 すべてが完結しないまま、

 それでも、穏やかに息を続ける世界が、そこに在る。


 灯は、今日も変わらぬ明度で揺れている。

 終わらないための光として。


























《アナザーエンド》

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