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エルド奇譚:迷宮の祠と真名の石  作者: VIKASH
第七の試練

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「却」―《選別の環 ― 可能性を退ける道》

◆「却」ルート



 霧は、刃を孕んだ光へと変質していた。

 朧の環に満ちていた揺らぎは、次第に輪郭を帯び、不要な層から順に剥がれ落ちていく。ここでは、曖昧であることは許される。しかし、無限に抱えることは許されない。却の道は、世界そのものに“選別”を強いる構造だった。



 一歩進むたび、霧の中から形になりかけた可能性が浮かび上がる。別の未来、別の決断、別の姿。それらは敵意を持たず、ただ存在を求める。だが白衡の導杖がわずかに傾くと、像は音もなく断たれ、光の粒となって散った。消えたのではない。世界の構成要素として“不要”と判断されたのだ。



 この道は、進行のたびに軽くなる。

 迷いが減り、視界が澄み、足場は確かなものへと変わっていく。朧の環が持っていた柔らかな不確定性は、鋭い稜線へと削り出され、道は一本の剣のように伸びる。分岐は存在するが、同時に存在し続けることは許されない。選ばれた道だけが、次の瞬間を持つ。



 やがて霧は薄れ、広い空間が現れる。天井は高く、遠方には巨大な門がそびえていた。門は閉じているが、封印ではない。通る者を拒むのではなく、通る資格を測っている。門の周囲には、切り捨てられた可能性の残骸が結晶となって堆積していた。剣となり、盾となり、名を持たない紋章となって、静かに眠っている。



 白衡の導杖は、その結晶群に触れ、ひとつひとつを吸い上げていく。捨てられた未来は、力へと再構成される。迷いは刃となり、後悔は装甲となり、選ばれなかった時間は加速へと変換される。却の道は、奪うだけではない。切り捨てたものを、次の一歩の燃料へと変える。



 門の前で、空間が揺れた。

 霧の奥から、かつて存在し得た“別の姿”が現れる。温和な選択を積み重ねた形。破滅を避け続けた形。誰も傷つけず、誰にも触れないまま終わる未来。それは敵ではなく、否定でもない。ただ、並び立つ可能性だった。



 導杖が光を帯び、空間に一本の線が走る。

 線は像を切り、門へと続く道を刻む。残像は結晶へと変わり、足元に沈んだ。



 その瞬間、門が微かに呼吸する。

 世界が、次の段階へ進む準備を始めた合図だった。



「進め、選ばれたものだけが世界を拓く」



 声は門そのものから響いたのではない。却の道が、初めて“言葉”という形で意思を持ったのだ。導杖は応えるように静まり、周囲の結晶が一斉に輝く。選別は終わらない。だが、選ばれた軸は定まった。



 門は、まだ開かない。

 代わりに、その表面に新たな紋が浮かび上がる。剣と環が重なった印。選別を経た者だけが刻める、継承の証だった。



 背後で、朧の霧が遠ざかっていく。

 前方には、未踏の階層が広がる気配がある。そこには、選別を拒む存在、可能性を無限に孕む獣、そして世界の基準そのものを覆す試練が待っている。



 却の道は、王道へと変貌した。

 迷いを断ち、力へと変え、世界を前へ押し出すための軌道。



 門が、わずかに開く。

 その隙間から、次なる時代の光が漏れ出した。




◆「獣」ルート ― 原初との融合


 却の力をもって進んだ先で、選別を拒む原初の奔流と遭遇する。それは無限の可能性そのものとして形を持たない“獣”だった。切り捨てることも、制御することもできないその存在を前に、却は初めて限界を示す。選ぶのではなく、抱え込むという逆転の決断により、獣と融合する道が開かれる。

 王は秩序と混沌を同時に内包する存在となり、世界は安定と暴走の狭間で新たな均衡を迎える。



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◆「罪」ルート ― すべてを背負う者


 切り捨てられた未来の残滓が、形を持って現れる。救われなかった選択、消された可能性、それらが集い、世界に“痛み”として反響し始める。却の力は正しかったはずなのに、その影は確かに残っていた。

 王は理解する。選別とは、誰かの未来を奪う行為であることを。ならばその重さを、すべて自らが引き受けると。世界は救われるが、王は永遠に罪を抱く存在となる。



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◆「環」ルート ― 切断から循環へ


 却によって生まれた断絶が、世界各地に歪みとして顕在化する。切られた未来は消えず、行き場を失ったまま滞留していた。

 王は気づく。却は終わりではなく、本来は循環の一部であるべきだと。切り捨てた可能性を、時間を経て再び世界へ還流させる構造――新たな“環”を築く道が示される。

 選別は破壊ではなく、更新の工程へと変質し、世界は閉じない輪として再生を始める。



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