魔術学園へ
それからしばらくして、学園へ入学する日がやってきた。ラール魔術学園の入学式は秋に行われる。汽車へ乗るために私は朝早くに荷物を持って正面玄関へ向かった。ロータリーに馬車が停まっていた。ここから馬車に乗って近くの駅まで行き、そこから列車でラール魔術学園へ行くのだという。
ラール魔術学園ではグロース国の診察を受けられないため、学園に常駐している医師の診察を受けられるとのことだった。
「学園とはいえ、他国へ行くのだ。言動には十分に気をつけ、周りに気を配るくらいが丁度いいじゃろう……。それから、時々わしへ手紙を書いてもいいんじゃぞ?」
「たぶん、書かないと思う」
「クレイトン伯爵。私が書きます」
「おお、アリエッタ。よろしく頼む」
「アリー、行こう」
ジルが馬車へ乗り込むと、私はクレイトン伯爵へお辞儀をしてから馬車へ乗った。
「寒くない?」
「大丈夫ですわ。それより、これを――この前言っていたゲームですわ」
「これが人気なの?」
「はい。テドラ王国の貴族間で、流行っているゲームだと聞いております」
「暇つぶしにはなるかも」
「よければお相手します」
「負けないからね」
「望むところです」
かくしてボードゲーム型の陣取りゲームが始まったのだった。
※※※※※
駅へ着くとテドラ王国へ向かう人が、ホームへ入る手続きをしていた。私達も行列に並ぶと、見送りに来ていた執事のサミエルに挨拶をした。サミエルは年齢不詳だが、伯爵よりかなり若く見える。けれど、剣術指南役をしていたくらいだから、それなりに年はとっているのだろう。
「サミエルさん、噂によると売店で珍しい魔術具が買えるらしいんです。買ってきても構いませんか?」
私がそう聞くと、サミエルは微笑んでいた。
「構いませんが……。どうか気を遣わないでください」
「剣術の稽古のお礼です。ジルに一緒に選んでもらいます」
「アリー。そんな話、聞いてないよ」
「いいでしょ。私の侍従なんだから」
「分かったよ、お嬢様。こちらへどうぞ」
ジルは肩を落としつつも、侍従のように私をアテンドした。屋敷で侍従になれるように必死に努力した成果もあって、彼の仕草は侍従そのものだった。
「やばい。こっちの方が俺向いてるかも」
「お二人とも、仲がよろしくて何よりですね」
「サミエルさん、からかわないでください」
「すみません。お土産と土産話、期待してますね。冬休みに、また会いましょう」
「はい。また冬休みに……」
サミエルさんに手を振ると、彼も手を振り返してくれていた。




