魔術オタク
人と魔獣の戦いは3日間続いた。先生や生徒、食堂のおばちゃんまで――戦える人は、全て結界の外で戦い、疲れると結界の中へ戻り休みつつ、交代で戦っていた。
校長先生が、災害用に備蓄していたポーションを持ってきて、戦いで魔力が切れそうになると、それを飲んで再び戦っていた――というか、そういうものがあるなら、早く教えて欲しい。ヴィーに飲ませることが出来れば、私はヴィーとキスする必要なんてなかったのだ。
「もう無理……」
私達の限界がおとずれる頃、魔獣が少なくなり、やがていなくなった。魔獣がいなくなった瞬間、正門前で雄たけびが上がり、上級生たちは泣きながら抱き合っていた。
「限界だわ……」
私は結界内へ入ると草むらに膝をついた。ヴィーと組んでたとはいえ、最近になって魔力を使えるようになったばかりなのだ。魔獣を倒すのに力み過ぎていたと思う――今になってそう思うが、私の今の実力では仕方がなかったのだ。
「アリー!」
私が草むらに倒れ込みそうになると、ジルが私のそばへ来て身体を支えてくれた。
「大丈夫?」
「だめ。もう、限界――です」
そう言った私は、そのまま意識を失ったのだった。
※※※※※
目を覚ますと救護室ではなく、寮の部屋にいた。そばにはジルが座っており、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「気分はどう?」
「あれ?」
「救護室の方は、人がいっぱいだったからね。アリーの部屋に運んだよ」
「あの、ありがとう。ジル」
「うん」
「あれから、どれくらい時間がたったの?」
「3時間くらいかな? お腹すいてる? よければ何か売店で買ってくるけど」
「だいじょうぶ。もう少ししたら、私も一緒に買い物に行くわ」
「そう? 思ったより元気そうでよかった。それじゃあ、俺は自分の部屋へ戻るよ」
「待って、ジル」
「何?」
「私、魔術が使えるようになったの」
「うん?」
「私、これからも頑張るわ」
「うん、頑張って」
「ええ、頑張るわ。それを、ジルにも隣で見ていて欲しいの」
「分かった。そんなに急がなくても、ゆっくりでいいと思うよ。俺だって、こう見えて魔術を使えるようになるまでに、苦労したんだよ。一朝一夕じゃ、魔術は使えない――と思う。まあ、ヴィーのサポートがあれば、百人力なんだろうけど……」
私は、この先も人生を一緒に歩みたいと思って恥ずかしいのを我慢して言ったのに、かなり見当違いのことを言われてしまっていた。
「ジルのバカっ……」
「ええ? なんで?」
私は横に置いてあったクッションをジルへ向かって投げると、ジルは上手く躱しながら部屋を出て行った。
「何で分からないのよ、魔術バカなんだから……」
私は文句を言いながらベッドから起き上がると、部屋を出て売店へ向かったのだった。




