ブレスレット
アーサー殿下は床に転がったブレスレットを拾い上げると、何故かブレスレットの内側を見ていた。
「アーサー殿下?」
「この時計の紋様――スターン教だ」
「スターン教?」
「まさか……」
「ヴィー、やめるんだ。そいつは操られている可能性がある」
「え?」
ヴィーは掴んでいた手を離すと、私達のいる方へ振り返った。
「どういうことだ?」
「スターン教――ここ最近、新しく出来た新興宗教だ。なぜスターン教に入っていたのかは分からないが、操られていた可能性がある」
「どうして分かる?」
ヴィーが殿下へ聞き返すと、殿下は困った顔をしていた。
「……ここだけの話だ。まだ手の内を明かしたくなかったんだが――我がテドラ王国の王族直系には稀に魔眼をもって生まれるものがいる。秘匿されているが、私は『真実の瞳』を持っている」
「真実の瞳?」
「物事の真実を見極める『眼』だ。他にも色々あるが――すまない。今ここでは話せない」
「……」
「この能力こそが、私が命を狙われるとともに、周りの者たちに恐れられている一番の理由だ」
「確かに、こんな大掛かりなことを、一介の教師が全て仕組んだことだったというのは、われもおかしいと思う」
ヴィーは床に転がったトリウス先生を蹴りながら言っていた。冷静さを取り戻したのか、ヴィーの瞳の色は元に戻っている。
「ヴィー!」
私がヴィーに抱きつくと、恥ずかしかったのか、顔を逸らしていた。
「あるじ、われは殺してないぞ」
「うん。よく堪えたね。えらい」
「子供扱いをするな。照れるではないか」
「いいの。ヴィーは、うちの子だから。だれにも渡さないし、誰にも穢させない」
「あるじ……」
「どうしたの?」
「何だかお母さんを思い出したぞ」
「……ヴィーにもお母さんがいたのね」
「まあな。っていうか、われを何だと思ってるんだ」
「使い魔――じゃなくて使い竜?」
「くやしいが、合っていると思う」
二人で話していると、ペンダントからローズが出てきた。
「ちょっと、二人とも。気をつけて。誰かこっちへ来るわよ」
「え?」
「すまない。さっき、リンデに校長先生を呼んでくるように言ったんだ」
アーサー殿下はすまなさそうにしていたが、校長先生に何をどう報告したらいいのか分からない。
「ローズ、ヴィー。他の人に見られても困るから、いったんペンダントへ戻ってくれる?」
「分かったわよ」
「承知した」
二人はそう言うと、大人しくペンダントの中へ戻っていったのだった。




