贄と呪具
洞窟のような通路を進んでいくと、そこは以前に来たことのある祭壇の部屋だった。この間の崩落でも埋まらなかったと思われるその部屋には、以前に来た時と同様に祭壇があり、壇上にはエドワード先生が横たわっていた。
(もしかしてルパート先輩の代わりに、エドワード先生を贄にしようとしているの? 何をするつもり?)
「我は深淵なる闇魔術の使い手トリウス・メルシャン我の願いを聞き入れよ。全ての古竜の復活と魔獣の封印解除を望むものなり――あるべきものをあるべき場所へ帰さんと欲す。封印解除! アルキメットリバーレス!!」
このままではエドワード先生が死んでしまう――そう思った私は、最後の手段に出た。
「ヴィー、何とかして! 先生を助けて!」
「分かった」
人型になったヴィーは、ありえない速さで祭壇へ近づくとエドワード先生を壇上から蹴り落とし、魔術を解除していた。
「おのれ、邪魔をするな!」
先生はヴィーに対して魔術を放っていたが、ヴィーは難なく避けていた。
「アリー、こいつ殺っていいの?」
「殺さないで。後で話を聞くから、捕まえるだけよ」
「もしかして古竜が1匹復活していたのか? それは僥倖だ。しかも使役されているとは……」
何がおかしいのか、トリウス先生は笑い始めた。
「封印から目覚めぬ竜達には、エドワード先生の代わりに贄になってもらおう。そうすれば、大陸全土に封印されている魔獣の復活に繋がるからな。やはり、人間の贄は難しい」
「お前!」
トリウス先生は、再び魔術陣を作ると呪文を唱えた。
「イテルムデヌオールルース・アルキメットリバーレス!」
「やめろ!」
魔術陣は光を放つと回り始めた。どうやら魔術陣の術式が起動したようだ。
「古竜の魔力ぐらいの魔力がないと術が発動しなかったのか――喜べ、パイロン大国全土に封印されていた魔獣が復活したぞ」
「そんな……」
後ろを振り返ると、アーサー殿下が青い顔をしていた。テドラ国が大陸全土の魔獣を復活させてしまったのだ。責任を感じているのだろうか。
「アリー、こいつ殺してもいいか」
「駄目よ」
「こいつは――われの同胞を皆殺しにした。万死に値する」
「残念だったな。命令には逆らえないのだろう?」
ヴィーの目は血走っていた。トリウス先生の胸倉を掴むと、拳を振り上げた後に顔面に強烈なパンチを繰り返している。
「ヴィー!」
ヴィーが強烈なパンチを繰り返しているのにも関わらず、トリウス先生は無傷だった。
「もしかして、魔術具か?」
ヴィーはトリウス先生がつけているブレスレットを手首から外すと、こちらへ投げてよこした。
「お前に、われの何が分かる!」
「ヴィーやめて。お願い」
「悪いが、いくら主の頼みでもそれは聞けないな」




