戸締まり
リンデさんを含めた4人で実験室に着くと、鍵を借りるのを忘れていたことに気がついたが、鍵は開いていた。部屋の中には相変わらず黒くて大きな鍋と実験台が置かれているだけで、他には何もなかった。入り口付近に立っていると階段から誰か下りてくる足音が聞こえて、私は慌てた。
「だ、誰か来る!」
私が小声で3人へ伝えると、それぞれ実験室の中にある実験台の陰に身を潜めた。
――キィ
音を立てながらドアが開くと、意外な人物の声が聞こえた。
「あれ、おかしいな。開いてるのか?」
中へ入ると火魔術の先生であるエドワード先生は、地下へ繋がる扉がある床へ真っすぐに歩いて行った。
(まさか、エドワード先生が犯人……)
エドワード先生は、地下へ繋がる扉を開けると何もないのを確認したのか、すぐに扉を閉めていた。
「異常なし! 閉めるぞ」
誰に言っているのか分からなかったが、先生は部屋を出て行くと鍵を閉めていた。
「エドワード先生は戸締りに来たみたいでしたけど――開けたのは、先生ではなかったようですね」
「それなら、一体誰が何のために……」
「うわっ、びっくりした。トリウス先生だったのですね」
ドアの外では部屋を出て行ったエドワード先生と、トリウス先生が話しているようであった。二人が話している声が、地下の部屋にも響いていた。
「ええ、この間ここで戸締りをした時に落とし物をしてしまいましてね。実は見廻りがてら探していたのです。これくらいの小瓶なのですが、エドワード先生、見かけませんでしたか?」
「いいえ、私は何も……。お役に立てず、申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ。変なことを言って申し訳ありませんでした」
「それでは」
――ゴンッ
「いたっ……」
大きな物音がした後にエドワード先生の呻き声が聞こえると、再びドアの鍵を開ける音がした。私達は慌てて実験台の陰に隠れると、物陰からドアの様子を伺った。
「……」
鍵を開けたのは、やはりトリウス先生だった。先生はエドワード先生を担ぎながら、ドアのすぐそばにある壁に手を当てて魔術陣を発動していた。魔術陣が光ると、壁だと思われた場所に、ぽっかりと穴が開いた。その穴にエドワード先生を担いだトリウス先生が入って行くのが見えた。
「……」
しばらくしてから、私達はそっとトリウス先生の後をつけ、穴の中へ入ったのだった。




