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土曜日の見廻り

 殿下の食堂へ着くと、どこで護衛をしていたのか私達の後に続いてリンデさんが部屋の中へ入って来た。


「お疲れさまでした……」


「教頭先生、土曜日まで見廻りしてるんですね」


「どうしてなんでしょう? ただ単に問題が起きないか見張っているのでしょうか?」


 私がそう言うと、殿下は首を傾げていた。


「校長先生から話を聞いて、独自に捜査しているのかも」


「教頭先生が?」


「ええ、教頭先生が……」


 私がそう言うと、他の二人はそれはないだろうという顔をしていた。


「アリー、あのせっかちで自分のことしか考えてなさそうな人間が、独自に捜査なんてありえないよ」


「人は見かけによらないと思うのです」


(殿下は胡散臭そうに見えて、実はいい人だし……」


「アリー、今、私に対して何か失礼なこと考えたよね?」


 殿下の迫力のある笑みに私はたじろいだ。


「いえ、そんなことはありませんわ。殿下の笑顔は今日も、とっても素敵です」


「とっても素敵? どうせ、胡散臭いとか思っていたのだろう?」


「……」


「アリー?」


「そ、それよりもですね。教頭先生です! 怪しいとは思いませんか?」


 私が思いっきり話を逸らすと、殿下は傷ついた顔をしていた。


「怪しいも何も、元々が怪しいから、ちょっとくらい怪しくても気にならないよ」


「ぷっ……」


 ジルの言葉にリンデさんが吹いていた。


「す、すみません」


「トリウス先生は、なぜ中庭を見ていたのだろう……。もしかして、見廻るふりをして何か――魔術薬でも探しているとか?」


 以前に実験室で見つけた魔獣を呼び寄せる薬を私は思い出していた。


「まさか……」


「そんなはずは――ないですよね?」


「そうだね……」


「……」


 私達が疑心暗鬼になっていると、殿下が言った。


「この間、地下の実験室で発見された魔獣を呼び寄せる魔術薬なんだけど、調査機関の調べによると、1000年前に魔獣被害に苦しんでいる民のために王都にある騎士団の人が開発した魔術薬で、主に辺境の地に出没する魔獣に対する罠や――おびき寄せて騎士団が狩る時のために使ったらしいんだ」


「殿下、もう一度だけ地下の実験室へ行ってみますが? 何か分かるかもしれませんし……」


 私がそう言うと、殿下はうなずいていた。


「そうだね。時間がたっているから、今度は違う視点で物事を考えられるかもしれないね」


「行ってみましょうか」


 30分も経っていなかったが、私達は地下の入り口があった実験室へ向かったのだった。




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