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石の壁

「殿下、この花ではありませんか?」


「それは――花なのか?」


 私が草むらに生えていた雑草のような緑色の花を指さすと、殿下は怪訝な顔をしていた。


「だって、虫がついてますし……」


 茎から這い上がってきた小さな虫は、花弁の中にある球のような小さな蜜を取り出すと、せっせと地上へ運んでいた。


「どこへ行くんだろう?」


 虫の行く先が気になったのか、ジルは蜜を運ぶ虫の後をついて行った。


「ちょっと、ジル?」


 私がジルの後を追いかけると、殿下も本を抱えたまま後をついて来る。私達は湖との境目にある壁の前まで来ていた。湖と陸地の間には柵が張り巡らせられているが、陸地の一部分には石でできた壁が建っていた。


「壁の隙間から向こうに行ってるみたいだ。殿下、壁の向こうは湖ですよね?」


「そうだな――調べてみたけど、その昆虫は昆虫図鑑に載ってなかったよ。花も図鑑には載ってないし……」


 そう言った殿下は、図鑑を調べていた。私が昆虫の入って行った石の壁を押すと、壁はドアのように開いていた。


「うそ……」


「アリー、何をしたの?」


「いえ、私は何も……」


 殿下が本から顔を上げ、驚いた顔をしていたが、ジルは興奮した様子で壁の向こう側へ入っていた。


「すごいな、秘密の扉か?」


 石の壁の向こう側は四方が壁に囲まれた小部屋のような作りで、地面には地下へ続くと思われる階段があった。


「どこへ続くんだろう?」


「下りてみる?」


「どこにつながるか、何となく想像がついてしまうけど」


 そう言いながらも、私達は階段を下りって行ったのだった。



※※※※※



「やっぱり行き止まりか……」


 地下の通路は暗かったので、火魔術で手元に火を持ちながら先へ進むと途中で行き止まりになっていた。


「この間の崩落事故でここも埋まってしまったのだろう。この先は、この間見た祭壇があるんじゃないかな?」


「ルパート先輩は、ここを見つけて中へ入り、何かを見てしまったとかでしょうか?」


 私が殿下に聞くと、殿下は首を傾げていた。


「可能性として、なくはないと思うけど、先輩が記憶を取り戻さない限り、何があったのか調べるのは難しそうだね」


 私達はもと来た道を戻ると、石の壁を元に戻した。


「校長先生に報告しないとね。私は本を返してくるよ」


「殿下、一緒に行きますよ」


 ジルと私は殿下と本を返すために、一緒に図書館へ向かったのだった。




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