逢い引き
「誰かが刈り取っていったようですね」
花の咲いていた場所へ来た私達は、地面に花が刈り取られた痕跡を見つけていた。イーリスさんは遠い場所から護衛をするらしく、途中から姿が見えなかった。
「危険な花を刈り取った理由は、何なのだろうな……」
ジルと殿下が庭で腕を組みながら考えていた。ふとした瞬間、気配を感じた私は草むらに向かって風の魔術を放った。
「ファネロノ・ヴィント!」
舞い上がった風が葉っぱを散らして、隠れていた二人が現れたが、彼らはこちらを見て固まっていた。
「ケントとエリー?」
「お、おぅ……」
彼らは抱き合っていたのか、お互いに身体を離すと、赤面していた。
「アリー? どうしたの?」
「ごめんなさい。気配を感じたから、草を退かしてみたら、二人が逢い引きしていて……」
「あ、逢い引き?」
「アリエッタさん、違うの」
「何も違わないだろ」
エリーは否定していたが、ケントはそれに対して怒っていた。
「私達、数日前に庭でばったり出会って──色んな話をしている内にこんなことに……」
(まさか、花の影響?)
「二人がいるなんて思わなくて……。邪魔してごめんなさい」
「邪魔だなんて、そんなことは……」
「行こう」
ケントはエリーの手を引っ張ると、寮へ帰って行った。
「あいつら、いつの間に……」
ジルは立ち去る二人を呆然と見ていたが、殿下は一人で考え込んでいた。
「殿下、もしかして……」
「ああ、うん。花の影響かもしれないね」
「花の影響? もしかして、お互いに格好いいとか、可愛いって思ったってこと?」
「どうだろう? 幻を見てもそんなことにはならないと思うし――それよりは、なにか軽い暗示にかかったって方が、状況としては納得できるけどね」
ジルの疑問に対しての殿下の答えは、どうにも腑に落ちなかった。幻影を見ただけで、恋に落ちるだろうか?
「殿下、幻影はきっかけに過ぎなかったのではないでしょうか?」
「きっかけに過ぎないか──ルパート先輩も、何かのきっかけで記憶を思い出してくれるといいんだが……。今日は、もう引き上げようか。昆虫図鑑の方は、そろそろ返さなくちゃならないね」
「……殿下、余計なことかもしれませんが、ルパート先輩は何故、花の図鑑を借りた後に、昆虫図鑑を借りたのでしょう? 花を見て、何かが気になったから、昆虫図鑑を借りたとは考えられませんか?」
「そうだね。だとすれば、ルパート先輩が見た花は、別の花かもしれない」
「別の花……」




