図鑑
アンナは丸い円盤の魔術具を覗くと、魔術具の横についているボタンを操作して何かを確認していた。
「そう、その花の図鑑を借りたいんだ。もともと、学年委員で花壇を作ろうかみたいな話があってね」
「余計なことかもしれませんが――それは、園芸委員のお仕事では?」
「……」
「他の生徒から新種の花を卒業生に送りたいという意見があったのよ。これは、ここだけの話なんだけど入学式のフラワーシャワーに感激した一年生がいてね。二年生が卒業するときに内緒で作って送りたいけど、園芸委員が委員会で作っていたら二年生にばれるからって言われて、私達が作ることになったのよ」
「そう。分かったわ――ちょっと待ってて。近くにあるから、取ってくる」
「ありがとう」
私がお礼を言うと、アンナは笑っていた。殿下の嘘も大概だったが、私の説明も訳が分からなかったと思う。
「殿下……」
「すまない」
「いえ、結果的に借りられることになって良かったです」
ジルの無言の攻めに屈した殿下は私達に謝っていた。ルパート先輩を助けるための嘘だから仕方がないとは思いつつも、少しばかり罪悪感を感じてしまう。
「お待たせ。この本だけど――殿下のカードでよろしいですか?」
「ああ、よろしく頼む」
文学の授業の時に作ったカードを殿下がアンナに手渡すと、アンナはカードをカウンターの中にある魔術具に本を翳していた。黄色と青の円盤が横並びに置かれており、黄色い円盤のような道具の上に翳すことによって、貸出登録完了になるようだ。
「はい、完了です。貸出期間は2週間ですから、期限内に必ずかえしてくださいね」
「分かった、ありがとうアンナ」
殿下がそう言うと、アンナは顔を赤くしていた。
「いえ……」
殿下は普通にしていれば、かっこいいんだけどな──などと、その時の私は失礼なことを考えていた。




