稽古
それから魔術学園に通う日まで、ジルベルト様と一緒にマナーや教養の授業を受けていた。マナー授業で分からないところがあれば聞いてもらい、一緒にやってみることで、ジルベルト様はかなり上達していた。だが、伯爵家当主としては、まだまだだろう。
私は私で執事のサミエルさんに剣術の稽古をつけてもらっていた。ずっと身体を動かしていなかったということもあるが、サミエルさんが剣術の指南役をしていたと聞いて、是非とも手合わせをしてもらいたいと思ってお願いしたのだ。
「右、がら空きですよ。姿勢が悪い。それじゃ、守るべきものも守れませんよ!」
「はい!」
たまたま暇だったのか、私とサミエルさんの稽古を、ジルベルト様は見学をしていた。
「すげえな……」
「私は師範から免許皆伝をいただいているんです。これくらい出来て当然です」
「言っていませんでしたが、私は城に詰めている第3騎士団の剣術指南役です。剣の勝負で私と互角に渡り合える女性は、はじめてですよ」
「恐れ入ります」
剣技をかわしながらも、水平に入ってきた剣をよけようと身体を捩ったところで、剣を叩き落された。
「参りました」
「時間があれば、また勝負しましょう」
「はい! よろしくお願いします」
稽古が終わって木陰で座って休んでいると、ジルベルト様が桶とタオルを持ってきた。
「顔洗ったら? すっきりするよ」
「ありがとうございます」
置かれた桶に入った水で顔を洗っていると、新しい水が足されていた。見上げると空中から水が溢れ出ている。
「すごいですね……」
「アリーの方がすごいと思う。あんな剣術、誰にでも出来ることじゃないと思う……」
ジルベルト様の素直な褒め方に頬が熱くなって俯いてしまう。照れくさいのを隠すために、私はジルベルト様に質問をした。
「そんなことは……。ジルベルト様の無詠唱魔術の方がすごいですわ。どういうイメージで魔術を使っていらっしゃるのですか?」
「何ていうか、お願いしている感じなんだよね。イメージも大事だけど、お願いしますって感じで出してる」
「え? お願い?」
「ジルの言ってることは正しいかもね」
誰もいないのに聞こえてきた声を不思議に思っていると、ペンダントが光っていた。ペンダントトップを持ち上げると、中からローズが出てくる。
「うわっ、誰だお前!」
「風の精霊、ローズよ」
「ローズ?」




