自己紹介
放課後になって、私とジル様は殿下の食堂へ来ていた。殿下の他に、護衛の宮廷魔術師のリンデと騎士のイーリスも捜索に加わってくれる。
「リンデ、あとで言うと驚くだろうから、先に説明しておく。ローズとヴィーは出せるか?」
「えっと、みんな出て来て?」
「はいはい」
「オッケー」
ローズとヴィーは起きていたのか、私達の呼びかけにすぐに出てきた。驚いて腰を抜かしそうになっているリンデさんに殿下が、今までのことを話していた。
「なるほど、風の精霊ローズと古竜のヴィーですね。ローズがクレイトン伯爵の契約精霊で、ヴィーがアリエッタ様の使い魔のヴィーですね」
「われにはクラヴィスという名があるが、皆そう呼んでいる。そなたにもヴィーと呼ぶことを許そう」
「なんかすいません。ありがとうございます。それにしても、伝説上の生き物が、実は封印されただけで生きていたとあっては、殿下。他の者に知れたら大問題ですよ。しかも、思ったより小さいのはどう考えればいいんだ?」
リンデの小さな呟きが聞こえたのか、ドラゴンであるヴィーはその問いに答えていた。
「リンデよ。われが小さいのはここでの生活に合わせるためじゃ。魔力もアリーの魔力を吸い取っているから、かなり戻ってきておる。もとの大きさにも戻れるが、このままの大きさの方がよかろう?」
「はい。それはもう――余計な事言ってすいませんでした!!」
リンデさんが頭を下げると、ヴィーは人間の姿になった。いつもと同じ金髪の青年だが、リンデさんと同じ服を着ている。
「ええー?」
「リンデ、先に見ておいて良かっただろう?」
「全くです」
「おぬしからは、いい匂いがするな」
「大変。リンデさんが狙われてるわ」
私がリンデさんとヴィーの間に入ろうとすると、ヴィーは素早く避けてリンデさんの唇を奪っていた。
「んー!!」
「ごちそうさま。うまそうな魔力だと思ったら、やっぱり旨かった」
「なっ、なっ……」
殿下は額に手を当て俯いていたが、ジルは「魔力があれば誰でもいいのか」と呟いていた。
「さて、自己紹介も終わったことだし、探しに行きますか」
殿下が爽やかな笑顔で、何もなかったことにしていた。
「そう言えばリンデ、魔術薬の解析の結果はどうだったんだ?」
「あれは――まぎれもなく、魔獣をおびき寄せるための魔術薬でした。かなり前に作られたものでして、罠を作る時に使用したようです。今は製造方法も城の書庫にある本にしか書かれておりません」
「そんなものを作って、一体どうしようというのだ?」
「今は魔獣自体が絶滅して存在していませんからね。他にどんな用途があるのか分かりませんが……」
「人体に影響は?」
「ありません」
「余計に意味が分からないな」
「ええ本当に」
「殿下、もうそろそろ行きましょうか。見て回れる時間も限られているでしょうし」
私がそう言うと、殿下は頷いていた。
「そうだね。行こうか。マルク先輩に話を聞ければいいけど……」
「確かに。やみくもに探しても、今日中に見つかるか分からないよな」
「ええ。学園内は広いですからね。ある程度、目星をつけてからでないと、難しいでしょう」
ジルの言葉にアーサー殿下は頷いていた。私達は話しながら殿下の食堂を後にしたのだった。




