校長室へ
校長室へ行くと、校長先生は執務机の上で何やら熱心に覗き込んでいたが、私達が部屋の中へ入ると、校長先生は笑顔を浮かべてローテーブルの横にある長椅子へ座るように促した。
「昼休みにすまんの。あと10分しかないが、急を要する話だったからの」
「ルパート先輩の話ですか?」
「そうじゃ。放課後の掃除は、もうやらなくてよい。その代わり、ルパートを探し出して欲しいのじゃ」
「校長先生は、学園のどこかにいるとお考えなんですね?」
「結界石が間に合わなかったから、学園の外に出て行ったのかどうかは分からない。でも、学園の外へ出たとも考えにくいじゃろう」
「分かりました」
「どこかの部屋のしかけに引っかかって部屋から出られなくなっている可能性が高いと思っているが、ルパート君は伯爵家の跡取りだ。攫っておいて、身代金を要求するかもしれん。内部犯の可能性もあるから、君たちには掃除をするふりをして学園内を探して欲しいのじゃ」
「校長先生、部屋に仕掛けなんてあるんですか?」
「毎年、在校生が卒業記念とか言って、部屋に何かを仕掛けて卒業していくのじゃ。もはや、伝統にはなってしまっているが、一応校則では禁止しているんじゃ。たいていは、部屋に入ると花が舞うとかの害のないものなんじゃが、たまに閉じ込められてしまう時があっての。卒業と同時に、見回りをして解除しているんじゃが、たまに解除し損ねてしまうものがあるのじゃ」
「危ないですね」
殿下は魔術薬の話をしたが、リンデさんがすでに校長先生に報告済みだったらしく、話はルパート先輩の発言に及んだ。
「すると、ルパート君は学園の問題点を探すと言って寮へ帰り、その後いなくなったんだね」
「ええ、そうです。ルパート先輩のことなんで、休日に見廻りをして何か余計なものを見てしまったのではないかと……」
「余計なものとは?」
「魔術薬の瓶は私が割ってしまいました。それで、作った人物――仮にMとしましょう。そのMが魔術薬が、もし無いことに気がついて再び作ろうとしたら――もし、作っている現場を目撃してしまったとしたら……」
「可能性はなくはないが、どうだろうか? 確かにあの薬を作るのは禁止されているが、あの程度の魔術薬だったら、先生が授業の一環で作ったと言ったらそれまでになるし……。明確な理由がない限り、それを見つけたとしても、わしにも相手を拘束できる理由はないんじゃよ」
「それは――厄介ですね」
アーサー殿下がそう言った時、予鈴が鳴った。
「放課後、よろしく頼む」
「分かりました。先生方には気づかれないように掃除するふりをしながら校内を探してみましょう。リンデ、放課後は一緒に行動してくれ」
「承知しました」
そう言った殿下は、私達と一緒に午後の授業へ向かったのだった。




