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契約解除魔術

「ジル、違うの」


「何が違うんだ?」


「殿下は、その――魔力が使えない病気のことを心配してくださって……」


「心配したら、抱きしめるのか?」


「違う……。そうじゃなくて――」


 私がうまく言えずに困っていると、ペンダントからヴィーが出てきた。


「おまえら、痴話げんかしてる暇があったら、われの魔術を試さぬか」


「ヴィー」


「そうだね。アリーの病気が治れば、私の憂えもなくなるし――自分で自分の心を咎めることなく、帝国のクレイトン伯爵家へ嫁入り出来るだろうから……」


「何言って……」


 ジルは何かを言いかけていたが、何も言えないと思ったのか、そのまま黙ってしまった。


「よし。では、われが魔術陣を展開するから、アリーはその中へ入ってくれ」


 そう言ったヴィーは、人間の姿へ変化すると呪文を唱え始めた。


「魔術陣が現れると同時に、陣の中へ入る」


「アリー……」


 陣の外では、ジル様とアーサー殿下が心配そうに見守っていた。ヴィーが呪文を唱え終わると魔術陣は光りながら輪が少し大きくなり、光が溢れるように輝くと、次第に魔術陣は消滅した。


「終わったの?」


「ああ。何か魔術を試してみてくれないか?」


 私はこの間火の魔術基礎の授業で習った呪文を唱えてみた。


「ファイ・フランメ」


「……」


 指先に火を灯す呪文だったが、何も起こらなかった。ちなみに魔術学園では、全属性――火・水・土・風・闇・光・空全ての属性が使えるように訓練が行われる。人によって得意不得意はあるようではあるが、ラール魔術学園では全属性が使えるようにようなる教育内容になっており、最低でも全属性の初級魔術が使えることが、2年生に上がる最低条件となっていた――魔術は、それぞれの属性で初級・中級・上級魔術となっており、上級になるにつれて魔術技術が必要になる魔術である。


「……何か他に原因があるやもしれぬな」


 ヴィーが呟いていた。私は魔術が使えないことを残念に思いながらも何となくこんなことになるような気がしていた。長い間、この病気と向かい合ってきたのだ。そんなに簡単に使えるようになるわけがないと思っていた。


「アリー、他にも方法がないか、また試してみよう」


「ジル、ありがとう」


「私も協力するから」


「殿下、ありがとうございます」


 ジルと殿下は睨み合っていたが、今は対立するべき時ではないと、お互いに悟ったのだろう――笑い合う二人の様子は、何だかぎこちなかった。




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