友達以上恋人未満
ジルと二人で、別棟の寮の部屋まで歩いていくと、私の部屋の前で立ち止まった。
「また明日、アリー」
「ええ、また明日」
部屋の前でジルが手を差し出してきたので、私は意味が分からないまま、とりあえず握手をした。すると、手を引っ張られて彼の腕の中へすっぽりと入ってしまう。
「アリー、駄目じゃないか」
「何がですか?」
ジルは何故か私の耳元で、囁くような声で話していた。何だか耳がくすぐったい。
「嫁入り前なのに、他の男にキスされるなんて……」
「ジル、あれは治療でしたのよ? 数にカウントされませんわ」
「でも、ファーストキスだったろ?」
「……」
「俺は、ファーストキスは好きな人としたい」
「ジル、それはどういう……」
そう言ったジルは、目を閉じて、こちらへ顔を近づけていた。意味が分かりかねて、私は慌ててジルの顔を押しのけると言った。
「ジル、私は好きな人とキスをしたいと思ってますが、相手も私のことを好きな場合に限ります!」
「?」
「ジルには素敵な方がいると思うのです。だから……」
ヴィーに魔力を吸い取ってもらったが、まだ私は余命2年である。少し良くなる可能性が出てきたとは言え、彼の隣に立つのは忍びないと思った。
「えっと、好きだったらキスしていいの?」
「え?」
呆気に取られていると、ジル様は私の額にキスをしていた。
「隙あり」
「ちょっと、ジル!」
「好きだったら、いいんだろ?」
「私は男女の関係の話をしているんです!」
明らかに揶揄われているのが分かって、私はいてもたっても居られなくなっていた。冗談だって分かっているのに、鼓動が早くなって恥ずかしくてジルの顔が見られなかった。
「男女の関係で好きって言ったら?」
「え?」
再び顔を上げると、再び額にキスをされた。見つめられて、頬が熱くなり俯いてしまう。
「おやすみ、アリー」
「おやすみなさい」
寝るにはまだ早い時間だったが、ジルに言われて、そう答えていた。俯いたまま、私は部屋へ戻ったのだった。




