竜族と魔獣
確かに子供がある程度大きくなったら契約解除はするべきだという大人達もいる。けれど、解除しないで問題になったという話は今まで聞いたことがなかった。
「契約解除にはお金がかかるのよ」
「アリー。父上に言って、契約解除してもらおう。それで、よくなる可能性があるんなら、そうしたほうがいい」
「ジル、ありがとう」
「ええと、それで? ヴィーはどこから来たんだい?」
アーサー殿下の質問に、ドラゴンであるヴィーは紅茶を啜りながら答えていた。
「たぶん、ここから見て東にある鉱山だ。竜族は昔、古竜を含めて封印された。王国には昔、竜使いっていうのがいてな。竜族が戦争に使われ、人や竜が殺されるのに我慢ならなくなったやつが、われを封印したんだ」
「封印された? 人間にか?」
「ああ、そうだ」
「もしかして、1000年前の竜退治の話か」
「まさか、絵本に出てくる?」
「黒き騎士、天より舞い降りて地上を滅ぼす竜を倒す。竜は涙を流しながら地へ返り、世界に平和が訪れた――だろ? 俺でも知ってるぜ」
「……本当は人が竜が封印していたなんて」
「われを含めて、封印されたのは数体じゃ。最後には、ほとんど残っていなかったからの」
「ヴィー、あなたが崩落事故によって封印が解けて、ここへ来たのは分かったわ。でもどうやって?」
「外へ出られなくて、地下をうろついていたんだ。そしたら、明かりが見えて近づいて行ったら声が聞こえて――外へ出られると思ったんだ」
「それが、あの実験室だったのね……。ということは、崩落事故の現場と学園は地下で繋がってるのかしら?」
「どうだろう。もし繋がっていたのだとしても、もともと繋がっていたのか、崩落事故が原因でどこかの道が偶然開けたのか、分からないね。他の仲間はどうしたの?」
殿下の質問にドラゴンは首を傾げていた。
「分からない。でも、近くにはいないみたいだった」
「ねえ、魔獣って知ってる?」
「魔獣? よく分からないが、魔獣は竜族が封印された後に絶滅したんじゃないのか? われが封印された後には気配を1ミリも感じなかったぞ」
「……そう」




