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契約魔術

「断じて夢ではない。気をしっかりともたれよ」


「ああ――ありがとう」


 尻もちをついていた殿下は、イーリスに助けられ何とか立ち上がっていた。


「われは魔力が尽きかけて死にかけている。そこの娘は、魔力が多くて死にかけている。そこで一つ提案じゃ」


「嫌よ!」


「まだ何も言っておらぬが?」


「何か嫌な予感がするの」


 私の嫌な予感は折り紙つきだ。的中率100%といっても過言ではない。


「われを使役せぬか?」


「無理です」


(絵本に出てくるあのドラゴンでしょ? そんなの私に出来るわけがない。無理に決まってるじゃないの)


「一つ、いいか?」


「ええ……」


「おぬし、そのままだと数日内に死ぬぞ?」


「え?」


 ドラゴンがそう言った瞬間、ペンダントからローズが出てきた。イーリスはローズに驚いたのか、その場で固まっている。


「アリエッタ、そいつが言うことは本当よ」


「え? でも、伯爵邸で診察してもらった時は、余命あと2年って言ってたのに……」


「このあたりの空気中に含まれる魔素が多いのよ……。魔素は魔術を使う時の源。アリーの名にある魔力量も増えるのが早くなって、あなたの中にある魔力は身体の中に収まりきらない感じになっているわ」


「そんな……」


「どうだ? われと使い魔の契約しないか? われが魔力を食ってやろう。命が助かるぞ」


 私がどうするべきか悩んでいると、ジルが前に出て言った。


「お前、何か企んでいるのか?」


「何も……?」


「こいつを傷つけたら、お前はただじゃおかねえ」


 そう言ったジルは、怒りながら小さな風を巻き起こし、手のひらサイズのドラゴンの首を風の魔術によって締め上げていた。


「それは、さすがにかわいそうよ……」


「こいつの得たいがしれない。こうすれば、本性を表すだろう?」


「いじめないであげて――お願い」


「分かった」


 ジルがドラゴンの拘束を解くと、ドラゴンは目に涙を浮かべながら怒っていた。


「お前っ!! 本当に死ぬだろ!!」


「悪かったよ」


「使い魔契約は主従契約だ。主の命令には逆らうことが出来ない」


「本当か?」


「本当だ」


「ジル、こいつの言っていることは本当よ。アリーの寿命はもうすぐ尽きるわ」


 ローズの言葉に頭が真っ白になった。自分がもうすぐ死ぬかもしれないと思ったら、今までのことを思い出して泣きそうになった。


「しっかりしろ、アリー。生きるんだろ?」


「ええ、生きたい……。私は生きたいの」


「なら、決まりだ。ドラゴン、頼む」


「われはドラゴンではなくて、古竜だがな。まあ、よい。アリーと言ったか? 契約をする。腕を出せ。ああ、魔術が使えぬのか。風の精霊よ、代わりに頼む」


「オッケー。いいわよ」


 ローズがドラゴンへ合図をすると、ドラゴンは目の前に魔術陣を展開させた。ローズが私の手を掴み、魔術陣の前へ手を翳す。


「わが名はクラヴィス。古竜の定めにより、契約を交わすものなり。われは、アリエッタを主人とすべきもの」


 ドラゴンが魔術陣の前に手を翳して契約魔術を唱えると、魔術陣が光を増した。魔術陣に手を翳しているローズも契約魔術を唱えた。


「わが名はアリエッタ代理のローズ。アリエッタに仕え、その身を捧げよ。さすれば共にいることを許し、必要に応じて魔力の供給を行う。主人に尽くすがよい」


 魔術陣が更に光を増し、部屋の中が光で溢れると魔術陣は消えた。


「よし、これで契約成立だな」


 ドラゴンはそう言うと、金髪に金色の目をした青年の姿へ変わっていた。




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