クラスメイトの話
「崩落事故は長びいたりしないってのは本当なのか?」
アーサー殿下の言葉に、彼らは口を揃えて言った。
「俺のひいおじいちゃんは、崩落事故に何度か合ってるけど、その時だけだったって、言ってたよ」
そう言ったのは、背の低い小太りのジョージ。自習中なのに何故かパンを食べている。
「おい! 殿下の前でパンを食べるのはやめろ。さっき食ったばっかりだろう」
隣にいたハンスが、彼のパンを取り上げていた。ハンスはジョージと違って痩せていて、背が高かった。
「だって、やることなくてお腹すいたんだもん」
「私は構わないよ。確かに、何もないと何かしたくなるものだね」
「殿下……」
殿下の言葉にジョージは目を潤ませていた。ジョージは食べていたパンを飲み込むと、意を決したかのように話し始めた。
「僕の父は鉱山で現場監督をしていました。それで、崩落事故があった時、責任を取って辞めてしまったのですが……」
「なんだ? 不当解雇か?」
「いえ、父は責任を感じて自分から辞めると言い出したんです。でも、調査に来ていた騎士団の方達が話しているのを、たまたま聞いてしまったと言っていて――」
「何を聞いた? いや、何を聞いてしまったんだ?」
「それが、封印が解けかかっていると……」
「……」
「封印?」
「……ジョージ、話してくれてありがとう。また、何か思い出したら教えて欲しい」
「分かりました」
「ケントもありがとう」
ケントはお辞儀をすると自分の席へ戻って行った。パンの取り合いをしていたハンスとジョージも席へ戻っていく。
「殿下……」
「いや、何かあるだろうとは思っていたが……。暗殺未遂なのか? それとも……」
「どっちも、という可能性はありませんか?」
ジルの言葉に殿下はため息をつきながら言った。
「そうかもしれんな……」
二人の様子に私は何も言えなかったのである。




