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魔術薬

「まさか惚れ薬?」


「そんなわけはないと思いますけど……。先生が薬品をこんなところに置きっぱなしにするわけないじゃないですか」


 アーサー殿下の言葉を否定すると、私はジルから小瓶を受け取った。中身を確認しようとしたところで、手がすべって床に落ち、割れて粉々になる。


「ごめんなさい」


 掃除をしていて、手が濡れていたのだ。取り落とした瓶を掃除しようとしたらジルに止めれた。


「危ないから」


「そうよ、危ないわよ」


「ローズ?」


「これは危険だわ。魔獣を呼び寄せる魔術薬ね」


 突然現れた風の妖精ローズに驚いたのか、アーサー殿下は尻もちをついていた。


「よ、妖精? 初めて見たよ。びっくりした……」


「あなたがアーサー殿下? 私で驚くなんて軟弱ものね」


「は?」


「それより、ローズ。魔獣って何?」


 アーサー殿下をいじっているローズを無視して話しかけると、ローズは薬品の周りをぐるぐると回りながら答えた。


「絶滅したのよね――昔は、魔獣がいたのよ。魔力を持った動物。同じく魔獣を持った人間が狩ろうとしても、なかなか魔獣は倒せなかった。でもある時、絶滅したの」


「私には、妖精が存在したことの方が驚きだ」


「テドラ国にはいないのですか?」


「いない。誰も見たことがないと思うよ」


「なあ、絶滅したのに魔獣をおびき寄せる魔術薬が置いてあるの、おかしくない?」


「……」


 ジルの言葉に私とアーサー殿下は何も言えなかった。


「これ、瓶は古いけど中身は最近作ったものね。中に入ってる薬草が昨年か一昨年のものだわ。そんなに古くない」


「昨年って言ったら、鉱山の崩落事故があったって言ってたよな? 何か関係があるのか……」


「それを調べるのは私の仕事じゃないから。じゃあねっ」


 ローズはそう言うと、ペンダントの中へ戻っていった。


「あっ、ちょっとローズ!」


「今の妖精は、君の契約精霊?」


「いえ――私の身を案じたクレイトン伯爵が貸してくださったのです。私の契約精霊ではありません」


「それにしても魔獣って――なに?」


 ジルの言葉に私達は顔を見合わせた。誰も魔獣の存在を知らなかったのである。




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