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掃除

 次の日の放課後、私達三人は地下にある大部屋の掃除をしていた――私とジル、それからアーサー殿下の三人である。


 殿下は校長先生から罰として、魔術学園の使用されていない部屋の全ての掃除をやるように言われていた。王族だろうが関係ない――校則違反をしたとして、1ヵ月の掃除当番を言い渡されていた。


 一方、私とジルはアーサー殿下を止めに行ったのを校長先生が知っていたため、校長先生からはお礼を言われ、さて帰ろうかというところで殿下の護衛係である宮廷魔術師のリンデと騎士のイーリスに捕まった。


「お願いします。私達が殿下の周りをうろつくと、殿下があまりいい顔をしないんです……。というか、基本あの部屋から出てくるなと言われております」


 それはそれでどうなんだろうと思ったが、私達は友達だ。今まで友達はあまりいなかったから、どうすればいいのか分からないが、友達なら困っているときには助けるべきだろう。


 物思いに耽っていたが、そこまで考えて顔を上げると、何故か目の前には大きな鍋を覗き込んでいる殿下がいた。


「あの、殿下?」


「この鍋で何を作っていたのだろうな……」


 ここは昔、魔術薬の授業で使われていた実験室だと聞いている。煤が残っている壁をモップで擦っていたが、一向に綺麗になる気配がない。殿下は私の背丈と同じぐらいある真っ黒な鉄製の鍋の中を、踏み台の上に乗って覗いていた。


「惚れ薬じゃないですか?」


 ジル様の適当な回答に、アーサー殿下は興奮していた。


「いいな、惚れ薬。一度でいいから作ってみたいな」


「殿下、惚れ薬の作成は法律で禁止されています。それは、テドラ国も同じであったと記憶しております」


 帝国では、『呪術』『黄泉がえりの魔術』『破壊の魔術』禁止されている。惚れ薬は以前は作られていたが、精神を呪う魔術として30年前に作ること自体、禁止になっていた。


「そうだよね……。アリエッタは詳しいね」


「お褒めいただき、光栄でございます」


 私が淑女の礼をすると、殿下はため息をついていた。


「卒業までに、何か面白いことしたいな……。この学園を卒業したら、私は陛下の元で執務をこなさなければならない。自由でいられるのは、今のうちなんだよ」


「……」


「ん? なんだこれ?」


 聞こえてきたジルの声に再び顔を上げると、ジル様の手には古びた小瓶が握られていた。




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