山の光
「どこへ行くんだね、待ちなさい」
アーサー殿下を追いかけていくと、学園を出たところで校長先生に見つかって、殿下は外へ出るのをとめられていた。
「確認をしに行くだけです」
「アーサー君、護衛はどうしたんだい? 君に何かあれば、私は君の父親に顔向け出来ない。少し冷静になりなさい」
「しかし……」
そう言っている間にも、地面は揺れている。殿下が迷っているうちに、周りの空気が少し変わった。
「これは――結界が破られたか、もしくは石が壊れたか……」
「校長先生、結界が破られたのですね?」
「いや……。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
私が校長先生へ詰め寄っていると、いつの間にかアーサー殿下は外へ向かって駆け出していた。
「アーサー殿下!!」
「校長先生、私が追いかけます」
「ああ、すまんが頼む」
校長先生は力尽きたのか、その場でうずくまってしまった。汽車が到着した場所とは反対側――つまり、正門には森へ続く橋が架かっていた。橋の上を駆けていく殿下を追いかけていると、橋を渡りきったところで、殿下は立ち止まった。地面には割れている四角い石が転がっていた。
「結界石が壊れている」
「殿下、非難しましょう。おそらく、自然現象ではないかと……」
「――そうだな。おそらく、また崩落事故が起きたのだろう。昨年、出入りを禁止したというのに、まったくどこの業者が採掘を始めたのだろうか……」
――ドオォォォン
「あちらか……。イデオン商会が管轄している場所ではないか」
殿下は少し先にある展望台のような場所へのぼると、近くにある鉱山を見下ろしていた。
「アーサー殿下……」
ジルは堪り兼ねたのか、アーサー殿下の名前を呼んでいた。
「すまない。鉱山を掘っている実行犯をこの目で見たかったのだ。今を逃せば、後で罪に問うことは難しいだろう」
そう言った殿下は、展望台から山々を眺めていた。視力がいいのか、山の壁面を目を凝らして見ている。
「あれ?」
「殿下、どうされましたか?」
「採掘場が光って見える」
「光ってって……。人がいるのでしょうか?」
「分からない。でも人がいるのだとしたら変だな。誰もいないんだ」
「誰もいない?」
「ああ。逃げ遅れた人がいないか見てくるから、君たちはここにて」
「アーサー殿下、あまり言いたくはないが、また崩落する可能性がある。あなたは護衛対象だ。もし万が一、殿下が亡くなるようなことがあれば、あの部屋にいた護衛達もただでは済まないだろう」
「……」
「帝国では確実に極刑は免れない」
「……分かった。私が悪かった。学園へ戻ろう」
ジルの言葉に我に返ったのか、アーサー殿下は急に大人しくなった。私達は学園へ戻り――その後、殿下は校長先生からこってり絞られたのだった。




