暗雲
しばらくすると騒ぎはおさまったが、窓の外には黒い雲が立ち込めていた。
「えー、広報からのお知らせです。外で何かが起きたようです。原因は不明です。生徒の皆さんは授業を中断して、速やかに退避してください」
急に聞こえてきた校内放送に教室内はざわついた。
「退避?」
「こんな山の中で、どうやって逃げろというのよ。母さんと父さんが心配だわ」
「そうだ。意味が分からないぞ……」
「みんな落ち着いて!」
殿下の大きな声に、再び騒がしくなってきた教室が静まり返った。
「この学園にはシェルターがある。大きな隕石が落ちても平気だし、魔術による攻撃だって効かない部屋だ。みんなには、一時的にそこへ避難してもらう」
「……」
「お願いだ。教室から出て、廊下に一列に並んで欲しい」
そう言われた他の生徒は呆気にとられていたが、しばらくすると黙って教室の外へ並び始めた。
「アーサー殿下、みんなはって、どういうことですか? まさか外の様子を見に行くつもりですか? 敷地外には出ちゃ駄目だって校長先生が……」
「私を狙った攻撃かもしれないでしょう? それならば、私が行って私が確認をすべきです。誰も巻き込んではいけない。王子が部屋の奥で守られていればいいなんて、誰が決めたんです? 私を倒しに来たのなら、どうどうと迎え撃つべきです」
廊下に並んでいたAクラスの生徒は、不安そうな顔をしていた。
「みなさん、Bクラスの後について行ってください。私は外を確認してきます」
「殿下、待って……」
アーサー殿下は踵を返すと、外へ向かって歩いて行ってしまった。
「ジル……。友達を助けたいの。この間、会ったばかりだけどアーサー殿下を助けたい」
「分かってる。この前、はじめて会ったけど、俺だってあいつの友達だ。助けに行こう」
「ええ」
私達は手を繋ぐと、殿下を追いかけて行ったのだった。




