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ランチ

 学園にはいくつか建物があって、建物によって高さが異なっていた。食堂のある建物は3階までになっており、一番奥にある部屋がアーサー殿下の言う、ランチを食べる場所らしかった。


「王族専用の個室なんだ。でも、一人で食べるのは味気ないし、下にある食堂で食べたら、みんなが気を遣うし――どうしようかと思ってたんだ」


「広いですね」


「うん。昔の建物だからね。こういう部屋はみんな広いよ」


 大きな部屋に、横長の大きなテーブルが一つ置かれていた。調度品もある程度いいものをそろえているため、外交でも使えそうな部屋である。部屋の中には、黒いローブを着た男性が窓の近くと入り口付近に立っていた。


「ものものしいでしょ? 国王陛下がつけてくれた護衛なんだけど、学園内を歩かれたら他の生徒が落ち着かないと思ってね。いつもはこの部屋に待機してもらってるんだ」


「護衛が2人も?」


「本当は5人いたんだけど、3人は帰ってもらったんだ。私は第3王子で、王位継承順位も低いからね。陛下――つまり父上は、私を国王にしたいと考えているみたいなんだけど……」


「それで護衛の人数が多いんですね」


「城では、何回か暗殺されかけたんだ。君たちに被害が及ぶと困るから、何かあったら距離を置くかもしれないけど、嫌いになったわけじゃないから気にしないでね」


「そんな……」


 私は殿下の言葉に言葉を失った。病気になって死んでしまうのと、誰かに殺されて死んでしまうのはわけが違う――彼は大きなものを抱えているんだと思った。


「あそこにいるのが、宮廷魔術師のリンデ、ドアの前に立っているのが騎士のイーリスだ」


 殿下にそう言われて二人を見ると、彼らはこちらを向いて会釈をしていた。


「食堂のメニューが、ここでも頼めるんだ。何がいい? 今日は私がおごるよ」


「いえ、大丈夫です。自分で出します」


「公費じゃないよ?」


「友達になるんだったら、割り勘が基本だから……」


 ジルの言葉にアーサー殿下は吹いていた。


「そうなんだ。ごめん、知らなかったよ。それで、何にする? 次期クレイトン伯爵?」


「なっ……」


「まさか、本当に? 君たちの関係を見ていて主従関係に見えなかったからね。悪いけど、かまをかけさせてもらったよ」


「ジル……」


「何か事情があるの?」


 隠しておけないと思った私は、アーサー殿下に正直に話していた。命を狙われていると言った殿下に、嘘はつきたくないと思ったのだ。


「アリエッタはジルの婚約者なの?」


「はい、一応……」


 私がジルを見れなくて俯いていると、アーサー殿下は腕組みをしながら私達を見ていた。


「先に注文しようか? お昼休み、このまま終わっちゃっても困るし」


「はい」


 私達は部屋に置かれている食堂のメニューを見ながら、注文した。どうやら護衛の人が買ってきてくれるようだ。


「星読みの授業、殿下はどう思いました?」


「実は私もやってみたんだ。そしたら、みんなと同じ“厄災”が出て――なにかの間違いかと思ったけど、私を暗殺しようと思っている人たちが、何か仕掛けてくるんじゃないかとも思ったよ」


「……」


「私はいいが、みんなを巻き込みたくない。だから、学園で何かが起きたときは、君たちは私を置いて逃げて構わない――絶対に、恨んだりしないし」


「殿下……」


「そんなこと、出来るわけないだろ」


 その時、下の階へ注文しに行っていた護衛のイーリスさんが食堂のおばさんと一緒に食事を部屋へ持ってきた。お昼ご飯を食べた後、私達は午後の授業へ向かったのだった。




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