入学式
「新入生、入場」
到着直後に流れてきたアナウンスに従って、私達は部屋の中に入った。大聖堂のような部屋の壁には、ステンドグラスが埋め込まれており、それ以外には大きな机が一つ置いてあるだけだった。部屋の中央には、木製の椅子が3列に並べられている。
在校生が魔術を使っているのか、部屋の中では色とりどりの花びらが上から降ってきていた。
「みなさん整列してください」
声が聞こえて振り返ると、机の奥には黒いローブを羽織った人が立っていた。彼が司会進行をする人なのか、在校生を椅子へ座らせていた。私達も部屋の中央へ案内され、他の生徒達と同じように椅子へ座る。
「入学式を始めます。校長先生、お願いします」
遅れてきた校長先生は、机のそばにある教壇に立つと、咳ばらいをしてから話はじめた。
「新入生諸君、入学おめでとう。この素晴らしい日に校長として立ち会えたことを誇りに思う。知ってのとおり、魔術学園には結界が張ってある。森に危険があるとは言えないが、昨年あった鉱山の崩落事故の件もある。むやみに敷地外へ出ないように。また、今年はグロース帝国より留学生が来ておる。学園は学びの場じゃ。お互いを尊重して、対等な立場で学び合えることを私は願っている……。以上じゃ」
「校長先生ありがとうございました。次に新入生代表から挨拶があります」
校長先生が白い髭を撫でながら教壇を下りると、校長先生と入れ違いに私達と同じ年代の男性が教壇の上に立った。金髪に深い緑の瞳をしたその人物は、私たちが事前に購入したものと同じ黒いマントを羽織っていたが、彼のマントには金の刺繍がしてあった。
「新入生代表のアーサー・テドラです。皆さんに出会えたことを嬉しく思います。この学び舎で、共に競い合い、時には協力して、仲良く過ごしていけたらと思っています。お互い頑張りましょう」
そう言った彼は、教壇から下りると席へ戻った。まばらに拍手が聞こえ、それにつられるように私も拍手をした。
「この後は、オリエンテーションになります。教室の案内がありますので新入生のみなさんは、ぜひご参加ください。以上をもちまして、入学式を終わりにします」
終了のアナウンスが流れると在校生は部屋から出て行った。部屋に入った時に思ったが、想像していたより生徒は少なそうだ。30人くらいの生徒が部屋から出ていくと、部屋に残った人数は30人より少し少ないように思われた。




