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ひととま  作者: 珈琲
第三章
95/105

3-9

「ノエル、お前に護衛をつけたいと思っているが、希望はあるか?ヒスイ一人だけでは心許ない。もちろん、あの三人でも良い。

城にいれば移動も無いだろう?」


「そうね。このまま城内に篭っているのも不便でしょう?」


母シルヴィアも頷く。


「んー……特に希望は無いけど……」


ノアは腕を組み、すごく考えた。


ユキは散々手合わせしているから攻撃パターンが分かっているし、周りが見えてて安心感はある。

でも……いざ戦闘になったら「ノアも早く構えろよ!」とか一緒に戦う前提で動くだろうな。

多分俺も乗っちゃう。これじゃ護衛にならない。


ハルはー…俺が危ない。

……まぁ、近くにいてくれるのはとても嬉しい。

でも鎌の軌道はまだ読みきれないし、すぐ側で振り回されたらまず俺が狩られる。

そもそも鎌を生成した時に、刃がどっち向いてるかわかんない。

実戦で突然魔法の実験始めそうだし危険。

俺、結界作れないから……無駄に巻き込まれる。


アキは……下手したら新薬の実験体にされる。常時観察できるなんて最高の環境だろう。

それに怪我は絶対治してくれるのは分かってるけど、そこに至るまでの手段が嫌すぎる。

……どうせ俺よりハルを護るだろうな。だいぶシスコンだし。



「……うん。ヒスイ以外護衛は要らないね。

俺より弱い護衛も邪魔なだけだし……。

それに……あの三人は向いてない。護衛から身を守る術が俺にはない」

ノアは断言する。


「あんなに仲良さそうで…素敵な人たちなのにね。

貴方が楽しそうに話しているのは知っているのよ?」

口元を隠しながら楽しそうに笑っていた。


「大切だから巻き込みたくないのだろう。ノエルにも良い友達が出来たと言う事だな」

国王も嬉しそうに笑っている。


「大事だけど、すごく違う」

ノアは足を組み替えて座り直した。


「それより、騎士団に早く戻りたいんですが。一応副班長やってますし。

副団長が休職中で大変みたいだから」


「そうだな……。落ち着いたら、だな。

レイも第一騎士団に復帰したがっているからな」


「……レイはかなり評判悪かったみたいだけど?ユキが同期で、だいぶ面倒だって言ってたし」


「知っている。次はちゃんと新人からやらせるさ。

案外、今は訓練場で素振りもしてるみたいだからな。お前が来てから、みんな良い方向に向かっているよ。

ただ…スティアがちょっと剣に興味を持ってしまったようでな。ルカと一緒に行っているようなんだ」

少し困った様子で国王が話した。


「戦うお姫様だね。いいじゃん」


そして、ノエルが執務室を出た後ーー


「やったな!シィちゃん!」


「やったね!エーちゃん!!

ノエルが喋ってくれたわっ!」


二人は両手ハイタッチをしてしばらく盛り上がった。



ーー


ノエルが城に戻ってきてから数日、登城する事もなくアーノルドは屋敷に籠っていた。


執務室で机を叩く。

蝋燭の炎が揺れる。


「……ノエルが城に居るというのに……なぜレガードは殺さない……。

すぐそこにいるではないか……!」


ぐぐぐ……爪が机に食い込む。


「すべてはノエルーーあのガキだ。

早く殺さねば……!

あの時、あれがちゃんと死んでいれば……すべて上手くいっていた……!」


苛立ちと焦りが襲いかかる。


「この私が……失敗、だと……?

若僧風情が……調子に乗りおって……!

従順だから使ってやっていたというのに……!」


記憶の引き継ぎを終えた身体は、徐々に魔力が減ってゆく。

かつてのように動けなくなる日も、そう遠くはない。


「……殺さねばならん。ノエルを……早く」


アーノルドは息を荒げたまま、引き出しの便箋を取り出した。


ガリガリガリガリ……


……書き終えた紙を見つめ、アーノルドの口元が歪む。


「これで来るだろう……あの甘い王子は。

大事な友人等を巻き込むまいと…自分だけで解決しようと来るはずだ……」


アーノルドの手は震えていた。

それでも口元を緩ませ、ニヤけながら封を閉じる。


「レガードよ。他の手柄はくれてやろう。

だが……ノエルは私の手で絶対に殺してやる」


揺らぐ炎がアーノルドの顔を照らしていた。


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