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事故から早半月。2人ともすっかり体力も戻って元気になった。
ヒスイは母ユウカに案内されて住民登録のため役場へ行ったり、仕事を探しに街へ繰り出した。
もともと孤児で定住していなかった、という設定で諸々の手続きを済ませたようだ。
ノアはエリックたちと一緒に、事故があった森とは逆方向の岩場でリハビリをしていた。
剣の腕前や運動能力には自信があったが、ユキにはまったく敵わない。神殿の訓練場では手加減されていたのか……?と不審に思うほどだった。
その時、岩場の隙間から巨大トカゲが6体、飛び出してきた。
ノアは一瞬驚いて後ずさってしまう。
ユキは迷いなく駆け出し、トカゲの首を下から斬り上げ、そのまま振り下ろして胴体を真っ二つ。
勢いのまま2体目の顔面を真横に斬り裂く。
隙のない滑らかな動きを横目に、ノアは雷を剣に纏わせ正面から真横にぶった斬る。
ノアの相棒は背中に担ぐタイプの大剣。雷で焼き切るような斬撃だ。
アキは陽の光からナイフを生成し、後方の巨大トカゲの目玉を狙う。
ハルは火の初級魔法を放ち、トカゲの周りに小さな爆発が次々と起こる。まるで花火のようだ。けれど実際は肉をかなり抉っていて、一番痛そう。
「ユキ、お前やっぱすげーな。どうなってんの?岩からでも簡単に剣を作れるのかよ。騎士でもできるやつは上位の連中くらいだぞ」
ノアは顎に手を当て、ユキをジロジロと眺める。
「俺の体質は土属性だからさ。うちの家系は代々魔族だし。父さんにコツを教えてもらっただけでさ。元とはいえ王子なんだから、無理しなくてもいいんじゃねーの?」
「いやぁー強くなりたいんだよ。俺、人間だしさ。魔族の血の方が濃いみたいだけど。でも騎士団入って内部から炙り出してやろうかと。だからエリックさん、よろしく!」
「え、その強さで人間だったの!?騎士の試験、受けるの?」
「さすがにノアは……危ないんじゃないか……?」
エリックが心配そうに呟く。
「俺も騎士試験を受けたかったから、一緒に受けようぜ!父さんも少しは安心するだろ?」
「まぁ、強くあってほしいとは思うけど、騎士にまでなるとは考えてなかったんだけどなぁ……仕方ないかぁ」
「じゃあ僕はどうしよっかなぁ?……まぁいいか。ハルの護衛でもしよっかなー」
「えー、私だけ守られるなんて、弱っちそうでやだー」
「でもハルはいかんせん魔力がなぁ……」
ハルの魔力は一般人並みのため、アキから渡された魔石を介して魔力を供給してもらっている。
基礎が少ないため上位魔法は使えない。知識だけあっても意味がないのだ。
それからノアとユキが15歳になるまでの間、昼間は近所の小さな学校へ、夜間や休日はみっちり訓練に付き合う羽目になったエリックであった。
ちなみにヒスイの仕事はまだ見つかっていない。