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ひととま  作者: 珈琲
第二章
75/105

2-24

皆、息を切らしながら城門前の広場まで戻ってきた。

空っぽの輸送車がたくさん停まっている。


ゴゴゴゴゴゴゴ……モキモキモキ…

地面が揺れ、盛り上がってくる。


ボゴォォォン

石畳の広場をぶち壊し、大きな輸送車をものともせず長い茎を伸ばし口の様な葉を開く。

ウネウネと動きながら、獲物を狙っている。


壊れた城門から飛び出してくる団長達。

「地面からも出てくるのかよ!」

副団長のリンデンは炎を纏わせた剣で斬り、燃やしてゆく。

「しつこいなぁ…」

ノアは雷の大剣を振り下ろし、両断する。


背後からは城門も外壁も、突き破りながらディオネアは追いかけてくる。


「まだ来るのか!?」

「遠くへ逃げろーー!!」

「早くー!」

先に城門を出た団員達も、散り散りに街の方へと逃げてゆく。




「うふふ。キーラ様、いい運動になりますわね。

それに、なんだか魔法使いみたいですわ。」


国王キーラの後ろに座ったラゼルが話かける。

「せっかく頂いたのですもの。時間をかけてゆっくりお召し上がりくださいな。

あぁ、スペア。誰でもいいわ。そうね……十人くらいかしら?

逃げないよう、結界を張りなさい」


「……はい」


スペアはランタンを持ち、地下への階段を下りて行った。


コツコツ…コツ…。

ガチャン キィィィ…。


地下牢には、眠らされている侍女たち。

二人ずつ、ズル…ズル……と引きずりながら、玉座の真下に位置する魔法陣へと運んでゆく。


魔法陣の中央には、禁忌の書がある。

勝手に本が開かれ、パラパラパラ…と結界のページが捲られて、止まった。


「ごめんね…」

と、言ったすぐ後、魔法陣が暗くぼんやり光る。十人の侍女達は眠ったまま、黒い炎に包まれてゆく。


ガタガタガタガタ………

地響きと共に、城下町を囲うよう、深い霧が包み込んでいった。



ーーー


ハルはレモ、イザベルと合流していた。


「はぁ…はぁ…すぅーーーはぁーーー……。だいぶ走ったね。兄ちゃん達もちゃんと逃げれたかなぁ…」


「はぁ…はぁ…大丈夫と思うしかないわね。連絡取れないんだから……」

レモも、息を切らしながら言った。


「早く…ここを出ましょう。城下町は危険すぎて休めないわ。

任務は支援で、魔物がいるなんて聞いてない!」

先輩のイザベルが先導して外の方へと走り出した。


その時、メキメキメキ…

地面を突き破り、ディオネアが大きな口を開けて襲いかかってくる。


「きゃぁっ!」

叫んだレモを、イザベルが引っ張った。


「危ない!!」

ハルは鎌に炎を纏わせ、振り下ろした。

ザシュッ。 

ボォォォォ…


「私って、ちゃんと通用するのかなぁ…?」

そう言って、ディオネアが燃え尽きるまでハルは見つめた。


「ほらハル、ぼーっとしてないで急ぐわよ!みんな探しながら!」


「はーい」


走っていると、地面にボコっと穴が空き、太い鞭のような根がズルズルと、音も無く地を這う様に足元へ伸びてきた。


「何よ…今度は根っこ!?挟まれるのも嫌なのにー!もうやだ、挫けそう……」

レモは泣きそうだ。


「巻きつかれたら潰されるわね…。レモ、頑張って!」

イザベルは剣を抜き、炎を纏わせる。


ハルも轟々と燃える鎌で足元に伸びてくる根を燃やし斬る。


「これ、雨降ってたら気づかないかもですね……あっ…、あれ!」


ハル達の視線の少し先。

足元から根に巻きつかれた団員がいたが、すぐに姿が見えなくなった。


「……急ぎましょう」

イザベルが冷静に言った。

根っこは突然、地面から出てきて伸びてくる。

三人は走りながら、何度も斬っては燃やした。



やっと城下町の端っこ。深く大きな川に囲まれ、その先は平原や小さな街が、いくつかある……はずだった。


今はすっかり深い霧に包まれ、土手も川も見えなくなっていた。


「うそ…もう!来た時のデカい橋も見えないじゃない…」

イザベルは肩を落とした。


「…出れないんですか……??せっかくここまで来たのに……」

レモの目に涙が溜まっている。


「私、みんなみたいに武器使え無いのよ!魔法だって近距離しか出来ないのに……。

私より強い先輩も食べられちゃって……もぅ無理だよぉぉ……うわぁぁぁぁん」

しゃがみ込んで泣き出してしまった。


「えーーっと…。大丈夫って思っておこっ!ね!なんとかなるって!ね!」

誰かを励ましてるの初めてかも…いつも励まされる側だし…。


「そうよ、弱気になったら負けよ。頑張りましょう」

イザベルも励ましの声をかけた。


「ハルならわかるでしょ?何も出来なくて……すごく逃げたい気持ち!!」

レモが泣きながら声を上げた。


「まぁー。ね…。うん……」

ごめんー……私、家族の誰かしら助けてくれるって分かってたから、全力で魔物に突っ込んでて……。

自分の弱さに絶望しても、逃げたいとか不安になった事無いんだよぉー。ごめんー。

ハルは困ってしまった。



ポツ…ポツ……ザァァァァーーーー……



「ほら、怖がってちゃ成長しないよ!それに年下困らせるんじゃないわよ。

あっち、多分救護隊達じゃない?雨凄くなってきたし、行くわよ!」

イザベルは建物の方に向かって行った。

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