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ひととま  作者: 珈琲
7/9

6

父を先頭に部屋へ入るなり、膝をつき頭を下げる。

「ご無事でなによりでございます」

4人も続く。



ベッドから起き上がり、姿勢を正して。

「顔を上げてください。このような姿で失礼いたします。このたびはノエル王子と私の命をお救いくださり、心より御礼申し上げます」

二人は深々と頭を下げた。


「とんでもないことでございます。どうかお顔をお上げください。お役に立てましたこと、まことに光栄に存じます」


「すまん。命の恩人であり、俺は第二王子ではなくなると思うし。普通の対応でいてくれると有難い」

俯きながら言う王子に対し、


「…ではお言葉に甘えさせてもらいますよ」

エリックはソファに腰をかけ、皆んなを促す。少し寂しそうな表情だった。



お城関係って堅っ苦しいんだなー

なんて思うユキ、ハル、アキ。



「事故か暗殺か、まだ確定していないので国には報告していない。後者で間違いないですか?」

机に黒刀を置く。



母は客間のテレビをつけ、生中継の“第二王子行方不明事件”のニュースを流し始めた。

崖下から、粉々になった馬車が発見されたという。

「生存は絶望的」とアナウンサー。


「どのチャンネルも事件ばっかりよ」


「あぁ、間違いない。暗殺だよ。黙っててくれて助かるよ。報告してたらこの家まるごと皆殺しだったかもなぁ。まぁ元・第一騎士団団長だから大丈夫だろうけどさ」


――実はお父さん、引退したばかりでまだまだ強いんです。今はスローライフ満喫してるけどね。


(いや。さすがに暗殺部隊とは…勘弁してほしい…)


「急に引退したから父も落ち込んでましたよ。にしても、ご結婚されてたのですね…」

「昔ちょっと色々ありましてね。すぐ駆けつけられないあの時間が地獄すぎまして。まぁ、次はちゃんと家族を守りたいな、とね」

遠い目をしながら言う。


これ以上聞くのはよろしくない空気を感じた2人。


「あぁそうだ。長男のユキ、双子の長女ハル、次男のアキ。そして嫁のユウナだ」



「俺はこのまま行方不明のままであれば、表向きは死亡扱いになるだろうさ。だからもう一般人でいい。畏まった対応も要らない。まぁ、暗殺部隊は遺体を確認するまで納得しないだろうけどね。引き続き調査はあると思うし、申し訳ないがしばらく匿ってもらえないだろうか?」


「何もありませんが…どうぞこのままお過ごしくださいませ」

ユウナはニッコリ笑い、「ハル、手伝って」と声をかけて部屋を出ていった。



「てゆーか、何て呼んだらいいんだ?俺はユキでいいけど。年も同じだろ?」

「そうだね。んーー…じゃぁ俺も二文字で“ノア”とかどう?あ、もちろん一般人だから敬語は無しな」

「僕はアキだよ。すごい友達できちゃった気分!」

「俺、まともに友達いないからさ。いいね、こーゆーの。よろしく」

「何、城って友達できねーの?つまんなそー」



(子供ってすごいなー。さすがに俺はすぐに切り替えるのは難しいなぁ…)悩み、黙って聞く父エリック。



ユキとアキは街のことを話し始めた。ここはスノーラの端っこで、あの山の麓へは月夜草を採りによく行くこと。今日は雪が降っていないこと。普段は父親に戦闘訓練をつけてもらっていること。図鑑だと後半に載る魔物ばっかりで寧ろスライムを見た事がないことなどなど…。



そこへパン粥を持ったユウナとハルが部屋に入ってきた。

「2人がうるさくてごめんなさいね」

続けて、

「この辺りは年の近い子があまりいないから…」とユウカ。


2人にパン粥を渡す。

「ああ、すみません」とペコリ。

昨夜から食べていなかったので空腹の2人。


「あ…すごく美味い…えー、こんな美味いの初めて食べた…」

超感動するノア。


ヒスイも続いて「…ほんとだ。美味いな」と。


「産直だからかしら?お城の食材よりは新鮮よね。きっと」

「お母さんパン屋さんだもんね。給食のパンは食べれないよ。フレンチトーストなんて最高だし!」と、ニコニコのハル。


「え、パン屋さんなんですか?」から始まり、

1階がお店であること、メロンパンが人気なこと、首都ではこんなのが流行っていること。

さらにウインナーやカレー入りのお惣菜パン、畑の耕し方や種まきの時期など――結局5人で盛り上がり、途中でアキがパンやスコーンを籠いっぱい入れて持ってきた為、試食会になってしまった。



ノアが新鮮野菜に惚れ込み、畑を耕すところからハマっていくのは、また後のお話。


(確か“2人がうるさくて”って謝ってたよな…王子が農業とか興味持つのか…?)

エリックはソファに座って聞いていた。


パンも野菜も鮮度が大事。

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