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ひととま  作者: 珈琲
第二章
64/105

2-13

くるくるっと軽やかに鎌を回し

「よっしょー!」


ザクッ…ザスッ……パキパキパキッ


毎日朝から、街に出た魔物を退治しています。

今日は鎌に氷の魔法をかけているので、傷や切断面、斬った部分だけが凍る。

火や雷だと、地面に焦げが残るし、臭いもキツイ。

風や土だと、体液や中身がぐちゃぐちゃ飛び散って汚い。


氷は全てのデメリットを打ち消してくれる、素晴らしい効果を感じますね。

見た目気持ちの悪い魔物を、綺麗な結晶でデコる。

……“美しい“と言う言葉以外にありますか?

絶命してから魔石になるまでの、数秒間だけの儚い結晶……。


魔物を退治してみんなの役に立ってる感じも、すごく、良い。心が軽くなるわぁー。

凍った鎌を抱えながら頬に手を当て、恍惚とした表情のハル。


建物の影から飛びかかってきた魔物も

鎌をクルッと回して…ザシュッ…パキパキ…

胴体を真っ二つ。


今度は気持ち、氷の結晶を大きくしてみた。

氷の中に閉じ込められた魔物の濁った血液と、透明な氷のグラデーションがはっきりと分かる。

陽の光で透き通る、まるで宝石のような輝き。


……うん、やっぱり氷が一番いい。困る人がいない。

「あっあっ…もう魔石になっちゃった……」




「ハルー!こっち終わったよ」


「あ、私も終わったとこー」


そこへ、同期のレモが声をかけてきた。

拳がバチバチと放電している。


「今日は氷なのね。色々な属性が使えるのはなんか羨ましいわね。私は雷だけなのに」


「生まれつきだからねー。でもさ、レモは武器使ってないじゃない。それはそれで凄くない?」


「まぁね!体術には自信あるわ!そもそも、広範囲とか遠距離とかの魔法使える程の魔力が無いんだけどね。剣はそんなに得意じゃないし」


「分かるー。剣って重いし私も苦手……」


「ハルって怖いくらい握力無いよね。さすがに剣握れないとは思わなかったわ」


「ねー。不思議だよね。腹筋はぼちぼちつくんだけどさ。手足はイマイチ育ちが悪くて…お陰様で本当不器用なのよ」


「まぁいいわ。ハルの鎌には色々助けてもらっているから。

お昼休憩に行きましょ」



食堂は、バイキング形式で深夜も運営されている。

好きなものを好きなだけ食べれるので、とても好評なのである。



ハルは、山盛りの粉チーズをかけたトマトペンネとサラダ、具沢山の豆スープ。


レモはチキンフライとサラダ、パンとかぼちゃのスープ。


お昼となると、食堂はだいぶ騒がしく、活気がある。


「あ、班長がいる!ハル、行こ!目の保養よ!」


「えー待ってー」

特に喋る事ないんだけどなぁ…


レモがずんずん行ってしまった。

「班長、ご一緒いいですか?」


「ん?あぁ、いいよ」


「班長もお疲れですね」


「そうだなぁ。ノアが不調で業務変えたから、しばらくは俺が夜間担当で。

他にも不調者が出てきているから配置替えしないといけなくてな」


「大変ですね。まだノアの体調悪い感じですか?」

ハルが聞いた。


「連絡取ってないか?業務はしていても、まだほとんど食事も摂ってないようだし、睡眠はまばらって感じらしい。

人間の方が繊細だから、病みやすいんだろうな」


「怖いぐらい何の反応もないですね。電話もメールも放置ですね……」


「魔族の血が濃いめでも結局は人間ですから。日々色々考えちゃうの分かるわぁ。

悩みでお腹いっぱいになっちゃって、食事なんて喉通らないのよ。他の事で気を紛らわしても、解決してなかったら結局戻ってきちゃって。

それが何度も繰り返されるとね、頭の中もいっぱいになって、どんどん病んじゃうのよ、人間って。最悪、死んじゃう人もいるくらいよ」

レモが怖い話しだした。


「そうか…だいぶ貴重な意見だな。」


「ここ、ほとんど魔族ばっかりですもんね。副団長なら多分共感できるんでしょうけど、時間帯合わない感じですね。

魔族の大半は悩む事はあっても、死んじゃおうとはならないですよね。てゆーか死んじゃったら全部終わっちゃいますよ」


「そうだな……死ぬ意味は分からないな。

俺は典型的な魔族だからさ。嫁さんや娘からは鈍いだの雑だの、デリカシーが無いだの言われるしなぁ…」


班長がどこか遠くを見つめている。

ご家族と何かあったのかもしれない。


「でも、その分魔族の人ってポジティブじゃない。

元気貰えるっていうか、心配してくれてるって分かりやすいし。愛されるってなったら、もう絶対的よね。一途だもの」

両手を頬に当て、うっとりしている。


「それにくらべて、人間の男って、目移り多いのよね!お前だけ、とか言いながら他の人にも手を出すのよ」

今度は怒りだした。


「レモ…そんなに何か…あったの…?」


「警察部隊は人間メインだから、色々あるのよ。ゴタゴタが…」


「そっかぁ。私の友達、人間の人ばっかりだったから…だから恋バナのネタがなかったのかな……」


「そうね!何かしらあれば分かるかもねっ!」


ハルは班長を見た。


「俺はそういうのよく分からんからな。困ってる側だ」


「ですよねー」


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