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ひととま  作者: 珈琲
第二章
61/104

2-10

突如、二階のメイド達が叫び始めた。

「キャー!」

「ルカ様!」

「姫様!」

「誰かー!」

護衛達が集まり、

叫び後を聞いた国王たちも各々控室から出て来た。

「ルカ!スティア!」

第二王妃が、取り乱し駆け寄る。



「どうなさいましたの!?」

サラは真っ先に階段を駆け上がっていき、

その後ろをアキとツカサが追いかけた。


そこには、意識無く倒れている、ルカ王子とスティア姫がいた。


「私がやるわ!」

サラは二人まとめて、銀色に輝く魔法陣から、癒しの魔法を。



なんか…ここ、匂いが強いなぁ……

そう思い、アキは辺りを見回し、明らかに戸惑い、動揺している王子たちが見えた。顔色が悪い。


「一体どうなってるんだよ……!」

ツカサは慌てるばかり。


アキはそっと、匂いの発生源を探した。


角にお香が…あれかな…

袖を捲って、後ろに下がりながら近づいた。

台座にちょっと触れたところで。


「おい。お前、勝手な行動は慎め。国王様がいらっしゃるのだぞ」

近づく音もなく、正面から声をかけられた。


「あっ、すみません。突然こんな事になって…びっくりしてしまいました……」


「ここから離れろ」


「すみません。失礼します」

アキは袖を直し、礼をして、直ぐにその場を離れた。


真っ黒い服…影の護衛ってやつ?びっくりした。

急に目の前にいるなんて。

でも、この匂いが原因なら…

ルカ王子もスティア姫も、髪の色は同じ水色。

ノアの妹弟だよね。きっと。

倒れたのは二人だけ。王妃様は大丈夫そう。

国王様は…ちょっと顔色悪いくらいかな。

上手くやれば、殺せるタイミングだろうに。

国王様がいるから?何かの確認?

そういえば、もう匂わないなぁ。


でも。お城の方に魔物が突っ込んできたのはなんだろう?何か目印とかあったのかな…

匂い?さすがに無理あるよなぁ…

何かで誘き寄せてるんだろうけど。


アキが考え込んでいたその瞬間。

ガンッッ!!

壁に頭をぶつけて、その場にしゃがみ込んだ。

「痛っったぁーー」

びっくりしたー!びっくりしたー!!一瞬、意識飛んだ!!


「えっ、アキ大丈夫!?」

魔法を終えたサラが、心配して声をかけた。


ツカサも揃って

「おい、なんなんだよお前。前見ろよ」


「ごめんごめん……あっ!!」

急いで窓の外を見るアキ。


「やっぱり……。ごめん、ハル…忘れてた…」

ハルが魔力切れを起こして座り込んでいるのが見え、ぼそりとつぶやいた。



二人は無事に意識を取り戻していた。

「ルカ、大丈夫?」

杖をついたローランが声をかける。


「う…うん……」

ルカは、まだちょっとぼんやりしている。


「まったく、急にどうしたんだよ。血の気が引いたぞ」

レイも声をかけた。眼帯をしている。


最近では王子達も、お互い身を守るためにまとまり始めていた。



「どうですか。国王様。姪のサラは優秀でしょう」

自慢げに右大臣のナコルが笑う。


「今年は優秀な人材が豊富ですな」

左大臣アーノルドがにこやかに声をかける。


「サラ、ありがとう!さすが自慢の親友だわ!」

そう言って、スティアがサラに抱きついていた。




国王や王子、姫達の顔がよく見える。

側から見れば、和やかで仲が良い王家。


ノアから聞いている話とは、だいぶ違う。

この中の何人が、王子を狙っているんだろう。

そもそも、何で殺したいんだろう?権力争い?

でも、護衛がやたら多いのは、守りであってほしいな。


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