2-10
突如、二階のメイド達が叫び始めた。
「キャー!」
「ルカ様!」
「姫様!」
「誰かー!」
護衛達が集まり、
叫び後を聞いた国王たちも各々控室から出て来た。
「ルカ!スティア!」
第二王妃が、取り乱し駆け寄る。
「どうなさいましたの!?」
サラは真っ先に階段を駆け上がっていき、
その後ろをアキとツカサが追いかけた。
そこには、意識無く倒れている、ルカ王子とスティア姫がいた。
「私がやるわ!」
サラは二人まとめて、銀色に輝く魔法陣から、癒しの魔法を。
なんか…ここ、匂いが強いなぁ……
そう思い、アキは辺りを見回し、明らかに戸惑い、動揺している王子たちが見えた。顔色が悪い。
「一体どうなってるんだよ……!」
ツカサは慌てるばかり。
アキはそっと、匂いの発生源を探した。
角にお香が…あれかな…
袖を捲って、後ろに下がりながら近づいた。
台座にちょっと触れたところで。
「おい。お前、勝手な行動は慎め。国王様がいらっしゃるのだぞ」
近づく音もなく、正面から声をかけられた。
「あっ、すみません。突然こんな事になって…びっくりしてしまいました……」
「ここから離れろ」
「すみません。失礼します」
アキは袖を直し、礼をして、直ぐにその場を離れた。
真っ黒い服…影の護衛ってやつ?びっくりした。
急に目の前にいるなんて。
でも、この匂いが原因なら…
ルカ王子もスティア姫も、髪の色は同じ水色。
ノアの妹弟だよね。きっと。
倒れたのは二人だけ。王妃様は大丈夫そう。
国王様は…ちょっと顔色悪いくらいかな。
上手くやれば、殺せるタイミングだろうに。
国王様がいるから?何かの確認?
そういえば、もう匂わないなぁ。
でも。お城の方に魔物が突っ込んできたのはなんだろう?何か目印とかあったのかな…
匂い?さすがに無理あるよなぁ…
何かで誘き寄せてるんだろうけど。
アキが考え込んでいたその瞬間。
ガンッッ!!
壁に頭をぶつけて、その場にしゃがみ込んだ。
「痛っったぁーー」
びっくりしたー!びっくりしたー!!一瞬、意識飛んだ!!
「えっ、アキ大丈夫!?」
魔法を終えたサラが、心配して声をかけた。
ツカサも揃って
「おい、なんなんだよお前。前見ろよ」
「ごめんごめん……あっ!!」
急いで窓の外を見るアキ。
「やっぱり……。ごめん、ハル…忘れてた…」
ハルが魔力切れを起こして座り込んでいるのが見え、ぼそりとつぶやいた。
二人は無事に意識を取り戻していた。
「ルカ、大丈夫?」
杖をついたローランが声をかける。
「う…うん……」
ルカは、まだちょっとぼんやりしている。
「まったく、急にどうしたんだよ。血の気が引いたぞ」
レイも声をかけた。眼帯をしている。
最近では王子達も、お互い身を守るためにまとまり始めていた。
「どうですか。国王様。姪のサラは優秀でしょう」
自慢げに右大臣のナコルが笑う。
「今年は優秀な人材が豊富ですな」
左大臣アーノルドがにこやかに声をかける。
「サラ、ありがとう!さすが自慢の親友だわ!」
そう言って、スティアがサラに抱きついていた。
国王や王子、姫達の顔がよく見える。
側から見れば、和やかで仲が良い王家。
ノアから聞いている話とは、だいぶ違う。
この中の何人が、王子を狙っているんだろう。
そもそも、何で殺したいんだろう?権力争い?
でも、護衛がやたら多いのは、守りであってほしいな。




